終末期癌で悪液質の状態では、機能改善補助食品の投与を含む適切な栄養管理により、栄養状態、臨床症状の改善、維持が得られ、最終的な臨床的不可逆的悪液質(refractory cachexia)の状態でも輸液栄養管理の変更(ギアチェンジ)などにより、臨床症状が改善することが示された。7月13日から15日にかけて名古屋で開催されている第66回日本消化器外科学会で、藤田保健衛生大学外科・緩和医療学講座の伊藤彰博氏が発表した。

 同講座では2003年10月に緩和ケア栄養サポートチーム(NST)を設立し、終末期癌患者に対し、代謝・栄養学を駆使して、不可逆的悪液質の有無により輸液栄養管理のギアチェンジを行う独自のガイドラインを作成、実施している。不可逆的悪液質は、高度の癌の進展による全身衰弱、コントロール不能な腹水、胸水、全身浮腫合併例としている。
 
 伊藤氏は、エネルギー消費と癌の進展について、消費エネルギー(REE)/基礎エネルギー消費量(BEE)(%)は、飢餓状態では93.4%に減少し、担癌状態では113.6%に増加するが、悪液質(臨床的不可逆状態)では86.9%に減少することを示した。

 今回は、終末期癌患者の臨床的不可逆的悪液質の概念とギアチェンジの適正な指針について検討が行われた。研究1では悪液質の状態における機能改善補助食品の効果、研究2では臨床的不可逆的悪液質の症例の栄養評価が検討された。

 研究1では、悪液質の状態の患者32人を対象とした。分岐鎖アミノ酸(BCAA)、コエンザイムQ10、L-カルチニン、亜鉛、クエン酸、ビタミンB群、ビタミンEを含む機能改善補助食品(インナーパワー)1パック/日を通常食に加えて4週間投与する群(16人)と、対照群(16人)について、投与前、投与2、4週後の血液生化学所見(アルブミン値、乳酸値)、倦怠感、同院独自の臨床症状加算式総合評価(痛み、倦怠感、呼吸困難など全9項目を各々0〜10点として加算。「なし」が0点、「激しい」が10点)の推移を検討した。

 その結果、2、4週後の血清アルブミン値は、低下する対照群と比べて投与群で有意に維持された(p<0.05、p<0.01)。乳酸値は、上昇する対照群と比べて投与群では維持された。臨床症状加算式総合評価も、点数が増加する対照群と比べて、投与群では2、4週と有意に減少した(いずれもp<0.01)。

 研究2では、3人以上の緩和医療スタッフにより臨床的不可逆的悪液質と診断された20人(年齢78.4歳)を対象とした。原発巣は肝胆膵癌が35%、食道・胃・大腸癌が30%だった。患者の予後日数は約14.5日だった。

 ギアチェンジ前後でアルブミン値に有意差はなかったが、トランスサイレチン(TTR)はギアチェンジ前と比べて、ギアチェンジ後に低下した(p<0.05)。臨床症状加算式総合評価は、ギアチェンジ後に低下が認められた。

 伊藤氏は「refractory cachexiaでは必要エネルギー量が減少するため、適切な栄養管理が必要。ギアチェンジの客観的指標として、臨床所見以外にTTRなどの推移は有用」と話した。