消化器外科における症状緩和手術では、患者に残された生存期間は短く、緩和手術で一定の症状緩和率は得られるものの、手術死亡率や在院死亡率は高い。QOLを高めることができるよう、症例ごとに適切な手術を選択し、十分なインフォームド・コンセントを行う必要がある。7月13日から15日にかけて名古屋で開催されている第66回日本消化器外科学会で、独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター消化器外科の前田好章氏が発表した。

 進行・末期癌患者では、癌性イレウス、瘻孔、出血などでQOLが低下し、退院やホスピスへの転院が困難となる症例がある。このような患者に対する症状緩和手術は、期待した効果が得られない場合や在院死となる場合が多く、手術の適応の決定が困難な症例も多い。

 前田氏らは、消化器外科における症状緩和手術の現状と成績を明らかにするため検討を行った。対象は2011年4月までの12年間に同科で症状緩和を唯一の目的として開腹手術を行った149人。不完全切除術や予防的バイパス手術などは除外した。

 原因となった癌種は24種におよび、最も多かったのは消化器癌の83人で、婦人科癌の40人、泌尿器科癌の11人、肺癌の7人がこれに続いた。

 症状緩和手術を要した理由では、癌性イレウス101人(74%)が最多で、癌性瘻孔18人(12%)が続き、その他には閉塞性黄疸、出血、穿孔だった。

 前田氏らは、出血などの緊急の場合を除き、定期手術を基本としている。定期手術と臨時手術はそれぞれ126人(84%)と23人(16%)に行われた。術式は、人工肛門造設術が74人(50%)、このうち9人にはバイパス術も併せて行われた。バイパス手術は61人(41%)に行われ、その他に腸瘻や胃瘻の造設、腸切除なども行われた。

 緩和手術の3カ月生存率は52%、1年生存率は21%、50%生存期間(MST)は約4カ月だった。症状緩和手術は短い期間のQOLを改善するための手術であることが示され、前田氏は「真摯な気持ちで受け止め、この間のQOLを高めることを考えなくてはならない」と話した。手術直接死亡率(30日以内死亡)は14.1%と高かった。

 一方、退院またはホスピスへの転院が可能となったのは85人(57.0%)だった。在院死亡率は43%となった。

 手術成績をみると、全生存率(OS)は、バイパス手術や腸瘻造設術と比べて人工肛門造設術で有意に良好だった(p=0.019)。また、婦人科癌のOSと在院死亡率は、その他の癌と比べて良好だった(p=0.032、p=0.025)が、癌種間の差は小さかった。

 定期手術と臨時手術の手術死亡率は、定期手術では13人(10.3%)だったのに対し、臨時手術では8人(34.8%)となり、有意に高かった(p=0.0053)。

 癌性イレウスで手術した110人の手術成績をみると、術前にイレウス管(または胃管)が留置されていた52人中、イレウス管が抜去可能となったのは41人(79%)に上った。また110人中、胃瘻造設などを除く、食事摂取が可能となる術式を行った104人中、実際に食事摂取が可能となったのは78人(75%)だった。ただし、胃癌はその他の癌と比べて低い値だった(p=0.046)。