ゲムシタビンを用いた術前放射線化学療法は、切除断端や剥離面の癌を陰性化し、生存期間を延長する可能性が、胆管癌に対する術前放射線化学療法(NACRAC)の試験で明らかになった。第66回日本消化器外科学会総会で、東北大学大学院統合癌治療外科の中川圭氏らが発表した。

 研究グループはパイロットスタディとして、2006年4月から2007年8月に胆道癌患者を対象に術前放射線化学療法を行った。手術を施行した15人における手術時間や出血量、術後在院日数、術後合併症は、術前放射線化学療法を行っていない他の患者と同等であり、その安全性が確認された。

 そこで、2007年9月からフェーズ1試験を開始した。試験ではまずMD-CTを撮影して、外科医が病巣の局在を判定して術式を決定する。外科医が切除領域や放射線照射希望範囲を提示し、放射線治療医が照射計画を立てる。

 術前放射線化学療法は5週間行った。ゲムシタビン(400〜1000mg/m2)は第1日と第8日に投与し、1週間休薬した後に第22日、第29日に投与した。体外照射は週に5回、1.8Gyで25回(照射総量は45Gy)行った。フェーズ1試験の結果、ゲムシタビンの投与量は600mg/m2と決定された。

 現在、フェーズ2試験で症例を集積している。対象はステージ3/4の胆管癌で、登録前の画像診断で根治切除可能と判断された患者。主要評価項目は病理学的根治度とした。

 これまでの病理結果から、腫瘍先進部やその近傍では癌細胞の残存が見られないことから、「胆管癌の先進部を制御し、断端や剥離面の陰性化をもたらす可能性がある」と中川氏。ただし、腫瘍細胞の変性や壊死が多くの患者で見られ、かつ広範な線維化が認められる患者がいたものの、腫瘍中心部の胆管粘膜周囲の病変は変性が弱く、術前放射線化学療法後も癌細胞が散在している可能性も示された。

 次に、術前放射線化学療法の有無で生存率を比較したところ、1989年9月から2007年8月に肝葉切除以上を施行した胆管癌患者111人に比べ、術前放射線化学療法後に肝葉切除以上を施行した胆管癌患者19人の生存率は極めて高いことが示された(p=0.1252)。また周術期合併症も同等であった。

 これらの結果から「切除可能な胆管癌の予後向上に術前放射線化学療法は有用である」と述べた。