高度血管侵襲合併肝細胞癌では、術前単回肝動注化学療法(CAM)が有効だった患者の全生存率(OS)、無再発生存率(DFS)は、CAMが無効だった患者や施行されなかった患者と比べて有意に改善し、CAMへの反応性は有意な独立予後規定因子となることが示された。7月13日から15日にかけて名古屋で開催されている第66回日本消化器外科学会総会で、藤田保健衛生大学病院肝・脾外科の加藤悠太郎氏が発表した。

 血管侵襲として、侵襲・腫瘍栓を認める部位がVp3(門脈一次分枝)、Vp4(門脈本幹、対側の門脈枝)、Vv2(右・中・左肝静脈本幹、下右肝静脈および短肝静脈のいずれか)、Vv3(下大静脈)の高度血管侵襲合併肝細胞癌は予後不良で、治療法は確立されていない。そのため各施設でさまざまな取り組みが行われている。

 加藤氏らは、術前単回肝動注化学療法(CAM)として、カルボプラチン(CBDCA)150mg/body、ドキソルビシン(ADM)20mg/body、マイトマイシンC(MMC)8mg/bodyの投与を行っている。

 効果の判定は2週間後に行い、CAM有効例はAFP、PIVKA-IIが50%以上低下、もしくは造影CTで主腫瘍の縮小・腫瘍栓濃染の軽減を認める場合とし、CAM無効例はこれらの基準を満たさない場合としている。

 肝切除の適応は、CAM有効例では全例、CAM無効例では画像で安定状態となった症例で、それ以外の症例には、持続肝動注療法(FAIT)やソラフェニブを中心とした集学的治療が行われている。

 今回報告された成績は、Vp3、Vp4、Vv2、Vv3を合併する肝細胞癌患者81人についてで、このうち肝切除は54人(67%)に行われ、内訳はCAM有効群18人、CAM無効群26人、CAM非施行群10人だった。

 切除例の内訳(重複あり)は、Vp4、Vp3、Vv2、Vv3は、CAM有効群ではそれぞれ9、4、4、2人、CAM無効群では16、6、2、3人、CAM非施行群では2、4、3、1人だった。

 肝切除後の5年OSは、CAM有効群34.0%、CAM無効群0%、CAM非施行群0%となり、CAM有効群で有意な改善が認められた(p<0.0001)。平均生存期間は、CAM有効群37.7カ月、CAM無効群5.5カ月、CAM非施行群3カ月となった。

 3年無再発生存率(DFS)もCAM有効群で有意に改善し、CAM有効群、CAM無効群、CAM非施行群でそれぞれ28.8%、0%、0%となった(p=0.0089)。

 肝切除後の再発形式にも違いがみられ、CAM有効群では残肝単独再発が8人(44%)と多く、再治療が有効だった。無再発も4人だった。一方、CAM無効群では、肺、脳、骨、副腎などの肝外転移が50%と多かった。

 無再発生存期間の中央値はCAM有効群10.8カ月、CAM無効群2.5カ月で、再発後の生存期間の中央値はCAM有効群13.5カ月、CAM無効群4カ月となった。

 ただし、CAM著効例では血管壁への腫瘍栓癒着が著明となる。加藤氏らは切除の安全性と根治性を高めるため、腫瘍栓先進部のゾーン分類を用いて段階的に腫瘍栓のゾーンを下げながら摘除するなど、術式の工夫を行っている。

 単変量解析、多変量解析ともにCAMへの反応性がOS、DFSの有意な独立予後規定因子となることが示されたが、現時点ではCAM施行前にこの反応性を予測することは難しい。加藤氏は「今後、宿主側の免疫学的因子の関与を含めた検討が必要」と話した。