大腸癌肝転移例に対する肝切除率は15〜25%といわれているが、FOLFOX療法と分子標的薬(ベバシズマブ)によって、肝切除率が顕著に向上することが確認された。第66回日本消化器外科学会総会で、東京医科歯科大学肝胆膵外科の落合高徳氏が太田総合病院附属太田西ノ内病院外科での治療成績データをまとめて発表した。

 対象は、2008年1月から2010年6月に太田西ノ内病院外科で手術を行った大腸癌患者484人。このうち肝転移は91人(18.8%)で、同時性肝転移は64人、異時性肝転移は27人だった。術前にFOLFOX療法とベバシズマブが投与された。

 なお、予定残肝容量が30%以下の場合や、肝硬変などの肝疾患に伴う肝機能低下、腫瘍が左右のグリソンまたは3本の肝静脈に浸潤が疑われる場合、あるいは化学療法によって病勢がコントロール不能の場合は、手術の適応外とした。

 この結果、91人中42人(46.2%)で肝転移切除が行われた。このうち同時性肝転移は25人、異時性肝転移は17人だった。分子標的薬導入前の2003年1月から2007年12月の172人の肝切除率は27%、分子標的薬の導入で肝切除率は46.2%と高くなったことから、「化学療法の奏効率の向上に伴って、肝転移の手術適応が拡大した」と落合氏は述べた。

 肝転移切除群と非切除群を比較したところ、肝転移切除群では同時性肝転移が25人、異時性肝転移が17人だが、非切除群ではそれぞれ39人、10人と有意な違いが見られた(p=0.0367)。また肝転移個数(p<0.0001)や肝転移最大径(p=0.012)、肝外転移の有無(p<0.0001)にも有意な違いがあった。

 この中には化学療法後に原発巣と肝切除を行った例のほか、原発巣切除後に化学療法を行って肝切除をした例や原発巣と肝片葉切除した後に化学療法を行って肝二期的切除をした例も含まれた。

 91人の平均観察期間は26.8カ月。生存率を原発巣切除・肝転移切除と、原発巣切除・肝転移非切除、原発巣非切除・肝転移非切除に分けたところ、原発巣切除・肝転移切除例では1年生存率が97.6%、2年生存率が94%、3年生存率が94%で、原発巣切除・肝転移非切除例では1年生存率が71.9%、2年生存率は30.6%、3年生存率も30.6%。一方、原発巣非切除・肝転移非切除例では1年生存率は33.3%、2年生存率は16.7%と低かった(Logrank p<0.0001)。

 また同時性肝転移例64人の生存率も、原発巣切除・肝転移切除例では1年生存率が95.7%、2年生存率が95.7%、原発巣切除・肝転移非切除例では1年生存率が68.5%、2年生存率は32.4%だが、原発巣非切除・肝転移非切除例では1年生存率は33.3%、2年生存率は16.7%だった(Logrank p<0.0001)。このため、「大腸癌肝転移に対する肝切除は、生存期間の延長に寄与することが確認された」とした。