第66回日本消化器外科学会総会が7月13日から15日までの3日間、名古屋市で開催される。会長を務める藤田保健衛生大学医学部胆膵外科学教授の宮川秀一氏に、今回の総会のプログラムについて話をうかがった。


藤田保健衛生大学医学部
胆膵外科学教授
宮川秀一 氏

――今回の総会のキーワードとして、「創造」「連帯」「育成」の3つを挙げていらっしゃいます。

宮川 消化器外科はこれまで、手術手技に留まらず、化学療法、分子的な探索、治療に関する新たなパラダイムの創生など、包括的に発展してきました。そして日本の癌治療を、世界をリードするまでに仕上げて来たという自負があります。その伝統を受け継いで、この総会を、消化器外科のエビデンスの交流と「創造」の場としたい。それがまず最初です。

 次に「連帯」ですが、学生運動で連帯がよく叫ばれていた頃は、消化器の医師といえば口から大腸まで全てを診ていたのです。ところがここ10年くらいは、消化器外科の中でも食道、胃と十二指腸、小腸と大腸、肝臓と脾臓、胆道と膵臓といった、領域別の分化が進んできました。このようにある領域に集中して取り組んだことは、世界に誇れる治療成績を上げるための原動力にもなりました。しかし今、若い医師に対する教育という観点から考えると、それぞれの専門の人たちが連携して、領域の枠を超えたプログラムを作成しなければと考えています。

 2010年1月に、消化器外科関連医制度協議会、消化器外科学会データベース委員会を作りました。こういう横のつながりの中で、お互いに情報を共有しながら教育や制度に関して考えていこうということです。また、こういう動きを背景として、各外科領域の手術データを集約するNational Clinical Database事業も始まっています。総会では「National Clinical Databaseに期待するもの」という特別企画を設けて話し合います。

 そして「育成」。これは連帯のところで話したことの延長にあるのですけれど、これまでの総会は、どうしてもエビデンスの交流というところに重きが置かれていました。それは最初に説明した通り重要なことなのですが、外科医の志望者が減っている昨今、育成にも目を向けた企画を考えました。具体的には、「消化器外科専門医育成に求められるプログラム」というセッションになりましたが、このプログラムが日本ではまだまだ不十分なのです。

 日本ではその施設なりのプログラムがあるといえばあるのですが、その検証という点でも不十分です。しかも他の施設との連携という視点はほとんどありません。例えば研修医を受け入れて2年、そこから外科医として3年研修してもらっても、その先どうなるかは受け入れた病院も研修医自身もわからない状況ではないでしょうか。

 大学の人事では動いていますよ、あそこの病院は人が足りないから行きなさいと。しかし、せっかく外科医になった若い人がどういう過程を経て専門家になっていくのかという点では、誰もコントロールしていないのです。医師個人の選択と力量に任せられている。それでは絶対に若い人に魅力はないし、長続きもしないと思います。

――外科医志望者を増やすためにも、育成の問題は重要だということですね。

宮川 はい。外科医の育成を意識したプログラムを地域ごとに作らなければならないと思います。これには、勤務医を取り巻く環境の問題が当然関わってきます。今、地域の人たちに医療を提供する最前線の基幹病院には、研修医とその指導をする40歳前後の医師はいるのですが、その中間の世代が抜けている。この世代の外科医全体が不足しているので、多くは大学にいるのでしょうか。こういういびつな構造では、若い人たちもなかなか地域医療に入ってこれない。直接負担が来てしまいますから。

 米国では大学を中心として、その周りの関連病院全てが連携して外科医の育成プログラムを形成しています。一大学とその関連病院だけではなく、大学間の交流を含めたもの、そのようなことが日本でできれば、地域医療の再生にもつながります。

 私の大学の話ですが、2006年から私は統合外科の運営委員長という外科全体のまとめ役をやっています。以前は各科がバラバラに教育を行っていました。若い人は入ってきませんでした。そこで専門を越えて連携し、今年から若手教育の修練施設を発足させました。そしたらこれまで数人くらいしか外科志望者がいなかったのが、今年は10数人入りました。教育の道筋をきちんと示してやれば、それに反応してくれる若手がいると思います。

――消化器外科の主要な領域である癌治療に関してはいかがですか。

宮川 まず抗癌剤治療ですが、これを外科医が行うことに議論はあるでしょうが、実際の現場ではやはり関与せざるを得ない。緩和ケアに関してもそうです。消化器外科医として知っておかなければいけないこととしてセッションを組んであります。

 また、癌の外科治療ということでは、低侵襲が大きなテーマです。内視鏡外科に関して問題なのは、施設によって症例数や技術にばらつきがあることで、どうやって全体的に技術を高めていけばよいのかという点も議論されると思います。それから昨今の問題として、合併症のある患者の外科治療をどうするかということもシンポジウムで話し合います。

 私の専門の領域では、日本の膵臓癌や胆道癌の外科治療は世界に誇れる成績なので、エビデンスの交流を行いさらに高めていく。また最近のトピックとして、ゲムシタビンやS-1といった化学療法剤の成績がだいぶ出てきたので、この点も議論します。

 最後に全体的なことを言えば、消化器に関して専門を越えて集まって学び合う場として日本にはJDDWがありますが、今度の消化器外科学会総会はJapan Digestive Surgical Weekという意味も持った会にしたいと思っています。