大腸癌肝転移に対しては、個々の症例に応じて待機的肝切除や術前化学療法を併せて行い、適切なタイミングで肝切除を行うと予後の向上が期待できると考えられる。7月14日から16日まで下関市で開催された日本消化器外科学会で、千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学の吉留博之氏が発表した。

 大腸癌肝転移に対する肝切除は最大の効果を発揮する治療法であるが、新規抗癌剤や分子標的治療薬の出現により、術前投与を含む周術期投与の有用性が検討されている。

 同科における術前化学療法の対象は、主に技術的に切除不能な症例である。吉留氏らは今回、このような症例における抗癌剤の術前投与の意義と問題点を検証した。

 2008年までに術前化学療法を行ったのは32人(年齢中央値62歳、男性21人)で、同時性肝転移が23人、異時性肝転移が9人であった。肝切除不能の理由は、両葉多発(結節数中央値21)、腫瘍占拠部位不良、肺などの制御できない肝外転移、pN3などであった。

 術前化学療法として、FOLFOX導入前の時期にmodified IRISを22人、その後、mFOLFOX6+ベバシズマブを3人、FOLFOX4/mFOLFOX6を3人、FOLFIRIを3人、FOLFOX/FOLFIRI、ベバシズマブ、セツキシマブの併用を1人に行った。

 吉留氏らは、特に同時性肝転移の予後を改善することを目的として、それまで行っていた大腸癌との同時切除から、現在は大腸癌原発切除前と後の約2カ月の観察期間をおいて再評価した後に待機的肝切除を行っている。

 切除不能と判断された28人中、部分奏効(PR)は15人、奏効率は54%であった。肝切除に移行できたのは13人(46%)であった。PRまでの到達期間はmIRISで79日、FOLFOX±ベバシズマブで132日であった。術前のICGR15は10.5±6.2%で、軽度の肝障害が認められた。

 術式としては、拡大肝区域切除+部分切除、拡大肝葉切除+部分切除、肝葉切除+部分切除などが行われた。出血量は平均1032gで、通常の肝切除と比較してやや多かった。術後合併症は23.8%に発生したが、術前化学療法を行っていない初回肝切除と同等の結果であった。

 術前化学療法で奏効し、肝切除を行った症例の3年生存率は70%で、生存期間中央値(MST)には未到達である。奏効せずに肝切除を行った症例や肝切除を行わずに経過観察とした症例と比較して、有意に予後が改善された(p=0.0003、p=0.0068)。

 また吉留氏らは、長期の化学療法で脾腫が出現した症例を経験したことから、術前化学療法施行後に肝切除を行った22人を対象として、脾臓の容積と肝機能についても検討した。

 化学療法の内訳は、IRIS、FOLFIRIが14人、FOLFOXが8人であった。投与が6カ月以内であったのは9人、6カ月を超えていたのは13人であった。

 その結果、化学療法施行前と比較して、施行後の脾臓の容積は有意に増大した(p=0.049)。投与期間が6カ月を超えた場合に脾臓の容積は有意に増大し、レジメンではオキサリプラチンベースで有意に増大した(いずれもp<0.05)。

 これらの結果を肝機能で検討すると、術前化学療法施行後に肝切除を行った症例において、ICGR15との相関は認められず、脾腫が肝機能に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆された。

 吉留氏は肝切除のタイミングについて、進行(PD)を認めた症例では切除可能でも予後が不良であったため、「切除可能となった時点で直ちに切除し、切除可能例では投与回数を決めることが重要」とした。また術前化学療法のサイクル数については、化学療法による組織学的完全奏効(CR)率は低く、肝障害の問題もあるため、「化学療法を行い過ぎないことも必要」と話した。