肝細胞癌患者において、術前のBMIが低い患者ほど予後不良であり、BMIが重要な予後規定因子の1つである可能性が示された。7月14日から16日に下関市で開催された日本消化器外科学会で、獨協医科大学第二外科の石塚満氏が発表した。

 BMI(Body mass index)について、日本人を含む9万人を超える患者を対象とした大規模疫学調査の結果が2009年の「Lancet」で報告され、22.5≦BMI≦25における長期生存が示された。しかし、担癌患者、特に肝硬変や肝機能障害を背景に有する肝細胞癌患者に関する報告はない。

 そこで石塚氏らは、術前のBMIが肝細胞癌術後患者の予後に与える影響を検討した。

 対象は、2000年4月から2008年12月までの間に、肝細胞癌と診断され、同科で手術を行った398人のうち、重複癌症例、胃切除術後症例、緊急手術症例、透析を含む腎機能障害症例、甲状腺機能亢進症例を除いた342人。

 石塚氏らは、対象を入院時のBMIに基づいて、A群(BMI<22.5)、B群(22.5≦BMI≦25)、C群(BMI>25)の3群に分け、臨床背景因子との関連を調べた。予後との関連については単変量解析を行い、カプラン・マイヤー法による生存曲線を作成した。

 3群はそれぞれ、A群157人(うち男性120人)、B群94人(同77人)、C群91人(同74人)となった。原発性肝癌はA群131人、B群72人、C群68人で、再発性肝癌はA群26人、B群22人、C群23人だった。

 臨床背景因子において、BMIで分類した3群に統計学的な有意差を認めたのは、体重、最大腫瘍径、HbA1c、PIVKA II値であった。体重は、A群52.0±6.1kg、B群62.0±6.3kg、C群72.0±9.8kgであった(p<0.001)。最大腫瘍径は、A群4.7±4.3cm、B群3.4±2.8cm、C群3.6±2.7cmであった(p=0.007)。HbA1cは、A群5.55±1.25%、B群5.70+1.24%、C群5.85±1.05%であった(p=0.045)。PIVKA II値は、A群7500±28000U/mL、B群6600±28000U/mL、C群3100±21000U/mLであった(p=0.027)。

 BMIを含む33の臨床背景因子を用いて単変量解析を行った結果、予後不良に関連する因子として検出されたのは、再発性、多発性、CRP高値、AST高値、PIVKA II高値、発育形式が浸潤性発育(Ig)、肝静脈侵襲(Vv)陽性、切除断端の浸潤(SM)陽性、Cancer of the Liver Italian Program(CLIP)scoreが2以上、BMIが低いこと(A群)だった。

 BMIについては前述の疫学的調査の結果とは異なり、B群とC群に対し、術前のBMIが低いA群で予後不良であった(p=0.003)。オッズ比は2.030となった(95%信頼区間:1.277〜3.299)。

 平均生存期間は、A群911±674日、B群951±676日、C群1108±777日であった。カプラン・マイヤー法による生存曲線では、術後約3年間は3群間に大きな差はみられず、その後それぞれが独立した集団を形成し、C群、B群、A群の順で予後が良好であった(p=0.002)。

 この結果について石塚氏は、「病状の進行を反映して、術前のBMIが低い群ほど予後不良であった。栄養状態が予後に影響を与えている可能性があり、周術期の栄養管理の重要性が示されたと考えられる」と話した。