抗血小板薬を服用している患者に対して消化器外科手術を行う際、休薬に伴う梗塞性合併症に加え、手術後の出血性合併症にも注意が欠かせないことが明らかになった。7月14日から16日まで下関市で開催された日本消化器外科学会で、社会保険小倉記念病院外科の藤川貴久氏が発表した。

 対象は、2005年1月から2009年11月までに同施設で開腹手術(腹腔鏡下手術を含む)を行った1899人。対象者を、術前に抗血小板療法を行っていた491人と、行っていなかった1408人に分け、術後30日以内に発生した出血性および梗塞性合併症を調べた。

 抗血小板療法は、原則として手術の7〜14日前に中止し、術後は飲水可能となった時期から再開とした。ただし、緊急手術の場合や冠動脈ステント留置患者、脳梗塞のハイリスク患者では術前休薬期間を設けず、手術前日まで内服を継続した。こうした休薬を行わなかった患者は、抗血小板療法群の中で191人(39%)いた。患者背景は、当然、抗血小板療法群で年齢や脳梗塞・心疾患の既往が高くなっていた。

 その結果、出血性合併症は、抗血小板療法群で17人(3.5%)、抗血小板療法なし群で17人(1.2%)に認めた(p=0.005)。また、梗塞性合併症は、抗血小板療法群で9人(1.8%)、抗血小板療法なし群で8人(0.6%)だった(p=0.021)。

 合併症の発症に影響を与えた因子を多変量解析で検討したところ、出血性合併症については、2剤併用抗血小板療法(HR:5.60、95%信頼区間:1.68-18.7)、広範囲のリンパ節郭清など高度な侵襲手術(HR:3.63、95%信頼区間:1.48-8.92)、抗凝固療法(HR:2.89、95%信頼区間:1.09-7.68)が独立した危険因子となった。

 梗塞性合併症については、PS3以上の患者(HR:9.78、95%信頼区間:2.19-43.6)、高度な侵襲手術(HR:7.37、95%信頼区間:2.08-26.2)が独立した危険因子であり、抗血小板療法については有意差はなかった。

 藤川氏は、「合併症発症の危険因子をみると、梗塞性合併症はある程度抑制できたものの、出血性合併症に一層の注意が必要と考えられた。特に、2剤を併用した抗血小板療法を行っている患者では、より注意深い周術期管理が必要だ」と指摘した。