KRAS遺伝子検査が保険適応となる以前にセツキシマブを投与した進行・再発大腸癌患者において、KRAS変異型と比較して、KRAS野生型で奏効率、病勢コントロール率、無増悪生存期間が良好だったことから、KRAS変異の有無がセツキシマブの感受性試験となる可能性が確認された。7月14日から16日まで下関市で開催された日本消化器外科学会で、市立吹田市民病院外科の西垣貴彦氏が発表した。この発表は同学会の優秀演題に選出されている。

 KRAS遺伝子検査は2010年3月まで保険適用外であり、セツキシマブ使用に関する必須検査となっていない。西垣氏らは、2009年9月に自主研究としてセツキシマブ使用例のKRAS遺伝子変異を調べるとともに、同年10月に「大腸がんのKRAS遺伝子変異率に関する観察研究」に登録し、それ以降は野生型のみにセツキシマブの投与を行っている。

 今回は、KRAS遺伝子検査を行っていなかった進行・再発大腸癌の患者をレトロスペクティブに検討し、KRAS変異の有無を確認し、効果との相関を検討した。

 検討の対象は2008年10月から2009年9月にセツキシマブを投与し、2009年9月にKRASの状態を検査した15人(年齢中央値66歳、男性11人)。進行癌は5人、再発は10人で、結腸癌9人、直腸癌6人であった。手術時のステージはII、IIIA、IIIB、IVがそれぞれ2人、2人、3人、8人であった。

 セツキシマブを投与したのがセカンドライン治療であったのは3人、サードライン治療であったのは2人、フォースライン治療以降であったのは10人であった。前治療で使用した薬剤は、重複例を含め、オキサリプラチン14人、イリノテカン13人、ベバシズマブ13人であった。

 遺伝子検査はcodon12および13のダイレクトシークエンス法で行った。その結果、KRAS野生型は9人(67%)、変異型であったのは6人(33%)であった。2人の患者で原発巣と転移巣の両方を検討したが、2人とも原発巣と転移巣でKRASの状態は一致していた。

 標的病変の内訳は、重複例を含め、肝11人、肺10人、リンパ節4人、局所2人であった。

 セツキシマブをイリノテカンと併用したのは10人で、うち2人はFOLFIRI療法を行っていた。セツキシマブ単独療法であったのは5人であった。投与回数の中央値は19回(範囲:5〜40回)、投与期間の中央値は139日(範囲:28〜331日)であった。

 効果について、全体では部分奏効(PR)4人、安定状態(SD)3人、進行(PD)8人となり、奏効率は27%、病勢コントロール率(CP+PR+SD)は47%であった。

 KRASの状態別にみると、野生型ではPR4人、SD2人、PD3人で、奏効率は44%、病勢コントロール率は67%となった。一方、変異型ではSD1人、PD5人で、奏効率は0%、病勢コントロール率は17%にとどまった。SDとなった1人はFOLFIRIを行っていた。

 無増悪生存期間の中央値は、全体では4.6カ月、野生型4.9カ月、変異型1.9カ月であった。

 有害事象は15人全員に発現し、合計158件であった。グレード3以上の有害事象は10人に発現し、計15件であったが、KRASの状態による差はみられなかった。

 ざ瘡様皮疹は全員に発現し、野生型と変異型で各1人がグレード3であった。初回投与から発現までの日数の中央値は14日で、ざ瘡様皮疹の程度と効果に相関は認められなかった。ステロイド軟膏、保湿剤、漢方薬の内服により、全員でグレード1以下に改善した。現在は予防的に、ロコイドクリームの塗布(顔面)、ヒルドイド軟膏の塗布、十全大補湯の内服を行っている。

 これらの結果から西垣氏は、「今後はKRAS変異に基づいた化学療法の戦略が必要」と指摘した。