進行・再発胃癌に対するS-1+シスプラチン(CDDP)による術前化学療法(NAC)は、腫瘍縮小効果が期待でき、洗浄細胞診(CY)における効果も認められたことから、予後の改善に寄与する可能性が示された。ただし、NACに対する反応は腫瘍肉眼型で異なる可能性もあることが示された。成果は、7月14日から16日まで下関市で開催された日本消化器外科学会で、大阪警察病院外科の浜部敦史氏が発表した。

 2007年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されたSPIRITS試験では、進行・再発胃癌に対するS-1+CDDPの併用療法の有用性が示された。その抗腫瘍効果の高さから、NACとしてもこの併用療法の有効性の高いことが示唆され、浜部氏らも手術のみでは再発率が高いと考えられる症例に適用している。

 浜部氏らは、症例間で治療効果の発現にある程度の違いが存在することを想定し、術前に治療効果を予測しうる要素として腫瘍肉眼型を挙げ、「type4」と「others」で比較検討を行った。

 検討の対象は、スキルス胃癌(type 4)、臨床的に漿膜浸潤がある症例や2群リンパ節の腫大がある症例など、根治術後に癌細胞が遺残する可能性が高くS-1+CDDP併用のNACを行った計54人。type 4は20人(年齢中央値65.8歳、男性13人)、othersは34人(同63.7歳、21人)だった。術中所見から腫瘍切除を行わず、バイパス手術となった患者は各1人であった。CDDP初回投与までに審査腹腔鏡を行ってCYを採取し、NACを原則として2コース行い、終了から3〜5週間後に手術を行った。

 S-1 80mg/m2/日は21日間連続投与し、CDDP 60mg/m2は8日目に投与し、14日間休薬とした。

 2コース完遂率は46人(85.2%)であった。type 4では14人(70%)、othersでは32人(94.1%)が2コース以上を完遂した。NAC中止の理由として、type 4では経口摂取困難の増悪が多くみられた。

 NACによる洗浄細胞診の陰性化率は、type 4では15.4%で、NAC前に陰性であったにもかかわらず、施行後に陽性となった症例もあった。 Othersでは69.2%で陰性化が得られた。NACによるdown stagingはothersで得やすく、腫瘍が消失した例もあった。奏効率はtype 4で10.5%、othersで60.6%であった。

 NACに対する組織学的効果判定では、0から3までの各グレードの分布にtype 4とothersの間に違いはなかったが、othersの3人にグレード3の効果判定を認めた。いずれもCY陽性で、臨床病期IVと診断されていた。1人は誤嚥性肺炎で死亡したが、2人は3年の経過観察中、無再発生存している。

 Othersで根治度AおよびBが高い結果であった。Othersの根治度Aの13人中5人、根治度Bの12人中1人、そしてtype 4でも根治度Aの2人中1人が、NAC前はCY陽性であった。NACを行わなければ根治度Cとなっていた症例であり、効果の高さが推測された。

 生存期間中央値(MST)は、type 4は324日、othersは757日で、有意にothersで良好だった(p=0.00261)。NACによりCYが陰性化した症例のMSTは1081日、陽性が持続した症例のMSTは295.5日だった。

 約3年間の経過観察において、othersの無再発生存期間は約50%に認められた。