大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術(LAC)は、開腹手術(OC)と比較して手術時間が長くなる点を除き、周術期関連事項はすべて良好な結果であった。せん妄などの術後合併症を増やすこともなく、高齢者にとって推奨される術式と考えられる。7月14日から16日まで下関市で開催された日本消化器外科学会で、順天堂大学下部消化管外科の高橋玄氏が発表した。

 高橋氏らは80歳を超える高齢者にLACを導入しており、今回、80歳以上の大腸癌患者におけるOCとLACを比較し、高齢者に対するLACの妥当性を検討した。

 対象は、2003年1月から2009年10月に大腸癌手術を行った80歳以上の患者102人(平均年齢84歳)。OC群86人、LAC群16人であった。検討項目は、占居部位、深達度、病期分類、併存疾患、開腹歴、手術時間、出血量、術後合併症、年度別件数推移とした。

 占居部位は上行結腸とS状結腸が多く、OC群ではそれぞれ26%と24%、LAC群では37%と13%であった。深達度は、ss以深の大腸癌はOC群67人、LAC群7人で、OC群で有意に多かった(p<0.05)。Dukes分類では、B〜DはOC群70人、LAC群9人で、OC群で有意に多かった(p<0.05)。

 併存疾患は、OC群の73人(84.9%)、LAC群の10人(62.5%)に認められ、高血圧、心疾患、脳疾患の順に多かったが、2群間に有意差はなかった。併存疾患の平均疾患数は、OC群1.48、LAC群1.31だった。開腹手術歴はOC群の50.0%、LAC群の25.0%が有し、2群間に有意差はなかった。LAC群には虫垂切除術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、最近では胃切除術も含まれている。

 生理機能やクレアチニンクリアランスに2群間の差はみられなかった。また米国麻酔科学会による全身状態分類(ASA-PS)は、両群ともClass2の「軽度の全身疾患を有するが日常生活動作は正常」が最も多かった。

 周術期関連事項として、手術時間はOC群188分、LAC群260分で、OC群で有意に短かった(p<0.05)。出血量、水分開始日、食事開始日、術後在院日数はいずれもLAC群で有意に良好な結果であった(いずれもp<0.05)。
術後合併症は、OC群48人(55.8%)、LAC群7人(43.8%)に発現し、OC群で多かったものの、2群間に有意差はなかった。せん妄、創感染、イレウスの順に多く認められた。年度別件数推移では、同院ではLACを積極的に進めていることもあり、OCと比較してLACの増加傾向が認められた。

 高橋氏は「今後は全身状態を考慮し、進行癌や病期の進んだ症例に対してもLACを取り入れたい」としている。