腸管の閉塞や出血を伴わない同時性転移大腸癌では、原発巣の切除が必要ではないかもしれない――。熊本大学消化器外科の宮本裕士氏は、7月14日から16日まで下関市で開催されている日本消化器外科学会でこう発表した。これは、肝臓や肺に転移を有する大腸癌に対し、さまざまな化学療法が可能になってきたためだ。

 演者らは、腸管の閉塞や出血を伴わない同時性転移大腸癌において原発巣の切除を行った切除群と行わなかった非切除群を比較検討した。対象は、2005年4月から2009年12月までに治療した大腸癌患者104人で、このうち原発巣切除群61人、原発巣非切除群43人だった。両群の年齢・性別・腫瘍部位に差はなかったが、転移巣の数については、切除群で1個が48人、2個が11人、3個が2人だったのに対し、非切除群では1個が27人、2個が8人、3個が8人と、非切除群の方が転移巣が多かった。

 切除群と非切除群の生存率を比較したところ、切除群27.3カ月、非切除群21.5カ月で、有意差はなかった(p=0.43)。その一方で、原発巣切除群には、創感染6.5%、縫合不全4.9%など全部で21.3%の術後合併症がみられ、合併症が生じた患者では術後補助化学療法の施行開始が遅れるといった影響があった。非切除群では、腸管閉塞により5人(11.6%)、消化管穿孔により2人(4.7%)が緊急手術を行った。消化管穿孔を来した2人はベバシズマブ投与患者だった。

 宮本氏は、「化学療法による消化管穿孔などの危険性について十分認識しておく必要はあるが、手術に伴う術後合併症も決して少なくない。原発巣を切除してもしなくても生存率に差はなく、腸管の閉塞や出血を伴わない同時性転移大腸癌に対しては、原発巣切除は必要ではないことが示唆された」と述べた。