胸腔鏡下での胸部食道癌の手術といえば、側臥位で行うことが一般的だ。だが近年、より良好な視野が得られるとして、海外で腹臥位での手術の有用性が報告され始めた。これを受けて、日本でも同様の試みが広がっている。長野市民病院外科の宗像康博氏は、側臥位と腹臥位を組み合わせた半腹臥位手術の経験を、7月14日から16日まで下関市で開催されている日本消化器外科学会で報告した。

 宗像氏らが半腹臥位手術を導入したのは2008年10月。これまでに経験した半腹臥位での胸腔鏡下胸部食道癌手術群13人と、側臥位での胸腔鏡腹腔鏡下手術群20人、開胸開腹下手術群51人の手術成績を比較した。

 その結果、平均手術時間は半腹臥位群7時間13分、側臥位群7時間22分、開胸開腹群7時間25分と差はなかった。一方、平均出血量は半腹臥位群147g、側臥位群480g、開胸開腹群782gと半腹臥位群で有意に少なく、術後の平均入院日数も半腹臥位群13.9日、側臥位群32.8日、開胸開腹群41.3日と半腹臥位群で有意に短かった。

 郭清できたリンパ節個数についても、半腹臥位群45.7個、側臥位群31.8個、開胸開腹群43.3個であり、半腹臥位群は開胸開腹群と同等のリンパ節郭清が可能であることが明らかになった。

 術後合併症については、開胸開腹群で吻合不全1.9%、肺炎9.8%、創感染5.8%、反回神経麻痺5.8%、側臥位群で肺炎15%だったのに対し、半腹臥位群では反回神経麻痺7.7%だった。

 宗像氏は、「半腹臥位での胸部食道癌手術は、腕神経叢の圧排や体位の保持が困難といった問題があるものの、安全性に優れた側臥位と視野の良好な腹臥位の長所を兼ね備えており、有用な手術法と考えられる」とまとめた。