進行食道癌に対する術前DCF療法(シスプラチン;CDDP、ドセタキセル、5FU)は、局所制御効果が高く、術後合併症の増加もみられないことから、術前化学療法の選択肢となる可能性が示された。ただし、毒性も強いため、実施にあたっては慎重な管理が必要である。7月14日から16日まで下関市で開催された日本消化器外科学会で、愛知県がんセンター中央病院胸部外科の安部哲也氏が発表した。

 食道癌に対する術前療法として、国内外で化学放射線療法が多く行われているが、安部氏らは、術前化学療法としてDCF療法も行っている。その理由は、放射線療法を治療選択肢として残したいこと、DCF療法は局所の制御に優れるとともに全身療法としても有用であること、である。

 今回の検討対象は、2007年4月から2009年10月までに術前化学療法施行後に切除した胸部食道癌患者80人。術前DCF療法を行った29人(年齢中央値59歳、男性26人)と術前FP療法を行った51人(同65歳、45人)について、毒性、術後合併症、腫瘍縮小効果、切除率、切除標本における組織学的治療効果と短期予後をレトロスペクティブに検討した。2群間に、主占拠部位や臨床病期などの有意差はなかった。

 DCF療法は、CDDP 60mg/m2を治療1日目、ドセタキセル60mg/mm2を治療1日目、5FU 800mg/mm2を治療1日目〜5日目に投与し、4週間ごとに2コース行った。一方、FP療法は、CDDP 80mg/mm2を治療1日目、5FU 800mg/mm2を治療1日目〜5日目に投与し、3〜4週ごとに2コース行った。

 その結果、グレード3以上の副作用において、DCF群で多かったのは、好中球減少症84%、白血球減少症40%、食欲不振20%、発熱性好中球減少12%であった。一方のFP群では、それぞれ2%、0%、4%、0%だった。

 両群とも在院死亡はなく、また術後合併症、出血量、手術時間に両群で有意差はなかった。周術期の合併症は、両群とも増加しなかった。

 原発巣の腫瘍縮小効果をみると、完全奏効(CR)と部分奏効(PR)を認めたのはDCF群76%、FP群57%で、DCF群の方が有意に高かった(p=0.015)。

 R0切除が可能となったのは、DCF群83%に対しFP群77%で、有意差はなかったものの、DCF群で高かった。

 組織学的な効果判定を行う上でグレード2、3をレスポンダーとした場合、DCF群のレスポンダーは38%、FP群では24%で、有意差はなかったがDCF群で多かった。

 無再発生存期間も有意差はなかったが、FP群と比較してDCF群で良好であった。DCF群の無再発生存期間をレスポンダーと非レスポンダーで比較すると、やはり有意差はなかったものの、レスポンダーで良好な成績であった。FP群でもレスポンダーの無再発生存期間が有意に非レスポンダーを上回った(p=0.04)。