岡山大学病院消化管外科助教の永坂岳司氏は、マイクロサテライト不安定性(MSI;Microsatellite Instability)とKRAS遺伝子変異BRAF遺伝子変異の有無によって、大腸癌の治療を選択することを提案した。臨床データのレトロスペクティブな解析から、non-MSIでBRAF変異の場合に予後が最も悪いことなどが明らかになったもので、成果は、7月14日から16日まで下関市で開催される日本消化器外科学会で発表した。

 永坂氏らは、岡山大学消化器腫瘍外科で根治切除が行われた結腸・直腸癌症例を対象に、MSI解析、KRAS遺伝子、BRAF遺伝子の解析を行い予後などとの関係を調べた。対象は、家族歴を認めず、かつ、術後再発の有無について5年間の追跡が可能だった154人(ステージ2が71人、ステージ3が83人)だった。

 その結果、MSIがあった患者は16人(10%)、non-MSIの患者は138人(90%)、BRAF変異型患者は14人(9%)、KRAS変異型患者は46人(30%)だった。再発はステージ2(71人)の10人(14%)、ステージ3(83人)の28人(34%)に起きていた。

 MSIがあった患者16人のうち9人はBRAF変異型で7人がKRAS野生型だったが、全員再発していなかった。一方、non-MSIの138人のうち再発は38人(28%)に起きていた。特に、non-MSIでBRAF変異型の患者5人のうち4人で再発が起きていた。なお、non-MSI(138人)のうち、BRAF変異型患者は5人(4%)、KRAS変異型患者は46人(33%)、KRAS野生型が87人(63%)だった。

 これらの結果に基づき永坂氏は、MSIがある患者は予後が良い傾向があることから補助療法は行わなくても良い可能性を指摘し、non-MSIでBRAF変異型の患者にはGDC-0879やPLX4720などのBRAF阻害剤やセツキシマブを、non-MSIでKRAS変異型の患者にはベバシズマブを、non-MSIでKRAS野生型の患者にはセツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブのいずれかを投与した方が良いとした。また、MSIがある患者ではより侵襲の少ない手術を採択できるかもしれないとする一方で、non-MSIでBRAF変異型の患者にはより確実な郭清が必要とも指摘した。