S-1+low dose cisplatin(CDDP)+放射線療法(TSLDR)による化学放射線療法(CRT)は、根治切除が困難な高度進行胃癌患者で高い奏効率が得られ、予後を大きく改善するという結果が示された。7月16日から18日に大阪市で開催された第64回日本消化器外科学会総会で、慶應義塾大学外科の才川義朗氏が報告した。

 国内では毎年5万人以上が胃癌で死亡しており、まだ全例が治癒する疾患ではない。現在の胃癌治療の原則は手術による根治切除だが、根治切除後の再発・死亡も存在し、手術治療だけでは不十分である。

 才川氏らは、大きな原発巣や転移巣を伴い根治切除が困難な高度進行胃癌38人に対し、CRTを行っている。「まだチャレンジの段階」とコメントしたうえで、同氏は有用性の高いこの治療法について報告した。

 放射線療法を胃癌治療に用いることには異論を唱える向きもあるが、この術前CRTでは、局所治療が原則のステージIではリンパ節転移の抑制、ステージII、IIIでは手術前および手術中の血行性・播種性転移のリスクを減少させることを目的とする。

 レジメンは下記の通り。入院加療でCDDP 6mg/m2/日を週5日、S-1 80mg/m2は連日、それぞれ3週間投与する。放射線は2Gyを週5日、計40Gy照射する。その後、外来でCDDP 20mg/m2を1〜3週に1回とS-1 60 mg/m2を連日で投与する。

 CRTを行った結果、評価可能病変を有する37人中24人(64.9%)に部分奏効(PR)を得た。CRT施行前は全例で全身状態の指標となるPSが不良で、摂食不可能・出血・嘔吐・疼痛などの症状を呈し入院を要する状態であったが、治療後は症状が緩和し35人(92.1%)が退院可能となった。

 CRT施行後、38人中16人(42.1%)に胃切除を行い、切除断端が陰性で病巣がほぼ全て切除されたと考えられるR0の割合は100%となった。腹腔細胞診(pCY)は0で癌細胞を認めず、腹膜転移(P)も0だった。さらに6人(15.8%)には病理学的完全奏効(pCR)を得た。CRTの放射線療法および手術による重篤な合併症は発生していない。

 さらに才川氏らは、癌幹細胞が胃癌などの固形癌の治癒に関与すると考え、研究を進めているという。