深部静脈血栓症(DVT)は術後の合併症の一つで、発生頻度は高くないが、血栓が肺に達し突然死の原因となることもある。7月16日から18日に大阪市で開催された第64回日本消化器外科学会総会で、大腸癌患者を対象にDVTの発生状況や、病院全体でのDVT対策の実施についてポスター発表された。

 下肢などの静脈で血栓が発生するDVTは、旅行者血栓症やエコノミークラス症候群といった名前で一般にも広く知られている。脚のむくみや痛みを伴うこともあるが、無症状の場合が多い。肺血栓塞栓症(PE)のおよそ9割は下肢DVTが原因で、PEによる死亡率は約30%とされる。

 新潟県立がんセンター新潟病院外科の野里栄治氏は、2008年10月から2009年3月までに大腸癌手術を受けた患者78人に対し、DVT予防のために、術中、弾性ストッキングと間欠的空気圧迫法(フットポンプ)を用いた。術後に下肢静脈超音波検査を行ったところ、下肢のDVTは12人(15.4%)に認められたが、PEを発症した患者はいなかった。

 2004年に作成された「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」では、手術の大きさや年齢などによって一般外科手術はリスクレベルが4段階に分かれている。野里氏らが対象とした患者の96.2%(75人)が高リスク群(40歳以上の癌の大手術)に該当することから、「予防を講じることが肝要である」と述べた。

 国際医療福祉大学三田病院外科の折口信人氏は、2008年8月に設立した院内の「肺塞栓ワーキンググループ」について発表した。設立のきっかけは、婦人科において術後に連続してDVTとPEが発症したことにあるという。院内マニュアルは医師用と看護師用を作成し、循環器内科と呼吸器内科、血管外科から成る「肺塞栓オンコール医」および他院CCUとのホットラインも設置した。

 具体的には、術前の全患者に肺塞栓用の問診票を記入してもらい、疑いのある患者には弾性ストッキングや抗凝固薬(フォンダパリヌクス)、下大静脈フィルター留置の適応を検討する。術前から弾性ストッキングを装着し、離床まで器械的マッサージを行う。

 ワーキンググループの発足以来、院内全体で術後の肺塞栓は発症していないという。DVT対策に関し、折口氏は「肺塞栓の患者さんを経験した医師以外、ほとんどは自分の患者には起こらないと思ってしまう」と述べ、その重要性を強調した。