手術時の手洗いの方法や予防的抗菌薬の投与期間といった周術期管理について、施設間で差があることが下部消化管手術の周術期管理に関する全国的なアンケート調査で明らかになった。7月16日から18日に大阪市で開催された第64回日本消化器外科学会総会で、三重大学大学院医学系研究科先端的外科技術開発学の小林美奈子氏が発表した。

 この調査は日本外科感染症学会の医療の質・安全委員会が、日本外科感染症学会会員の施設と日本消化器外科学会の専門医制度規定による認定施設、計1249施設を対象に2008年9月から12月に行ったもの。手術時手洗い、予防的抗菌薬、ドレーン留置、縫合糸、創傷ケアなどについて尋ねた。回答率は57.7%。

 手洗いに用いた水は、滅菌水を使用している施設が65%を占め、水道水が34%、両方が1%だった。手洗いの方法について、ブラシによる手洗いは、指先が44%、指先と前腕が28%、ブラシを使用しないが28%で、抗菌石鹸と擦式アルコール製剤(ABHR)の使用が56%、抗菌石鹸のみが38%、通常の石鹸とABHRの使用が6%と、施設によって異なることが示された。

 予防的抗菌薬については、投与開始が執刀60分前以内とした施設が93%と大半を占めたが、投与継続期間は術後24時間までが11%、24〜48時間が25%、48〜72時間が50%、72〜96時間が11%となった。

 ドレーン留置は、結腸手術では66%、直腸手術では96%で、ドレーン留置期間は結腸手術では2日間が10%、3〜5日が72%と最も多く、1週間が17%だった。直腸手術ではそれぞれ3%、48%、43%だった。

 縫合糸については、腹腔内では絹糸の使用が40%を占めたが、皮膚と筋膜では吸収糸やステイプルなどの絹糸以外の縫合糸が9割以上を占めていた。また創傷の治療にはドレッシング材やガーゼなどを使用するが、その使用期間を2日間とした施設が21%、3〜5日間が32%、1週間が47%と、施設間でばらついた。

 これらの結果を米国疾病管理予防センター(CDC)のガイドライン(guideline for prevention of surgical site infection)と比較したところ、「日本独自の対策が続けられている」(小林氏)部分が散見した。例えば、ガイドラインでは、手洗いは水道水、ブラシ不使用で、通常の石鹸とABHRの使用が勧められている。予防的抗菌薬の投与期間は術後24時間以内、縫合糸は絹糸以外を使うことが推奨されている。ただし、会場からは欧米と日本では手術の仕方が違うため、欧米のガイドラインを指標にしてよいのか、といった意見もあった。

 現在、日本外科感染症学会を中心に、予防的抗菌薬の投与期間に関する無作為化対照比較試験(RCT)を実施しているという。