大腸癌の腺癌で中分化型は増加傾向にあり、その背景には喫煙などの酸化ストレスによる環境因子を原因としたKRAS遺伝子変異が関わっている可能性が、ゲノム解析で明らかになった。7月16日から18日に大阪市で開催された第64回日本消化器外科学会総会のワークショップ「大腸中分化型腺癌への対応」で、九州大学大学院消化器・総合外科の掛地吉弘氏らが発表した。

 大腸癌の大半を占める腺癌は組織学的に高分化型、中分化型、低分化型に分けられ、高分化型に比べて中分化型は予後が悪いとする報告もある。

 同科で大腸癌切除を行った患者の組織型を年代別に見た結果、1979年から1988年の10年間では高分化型は50%(113人/227人)、中分化型は37%(85人/227人)だったが、1999年から2008年では高分化型が32%(120人/377人)に減り、中分化型が56%(210人/377人)に増えた。

 1999年から2008年の高分化型120人と中分化型210人を比較したところ、腫瘍径は高分化型に比べて中分化型のほうが有意に大きく(p<0.01)、深達度もSS(筋層を超えるが漿膜表面には露出していないもの)以上の割合が中分化型のほうが多いという特徴が見られた(p<0.01)。さらに静脈侵襲陽性、リンパ節転移陽性、肝転移陽性の割合も中分化型で有意に多かった(すべてp<0.01)。

次に、高分化型74人、中分化型55人を対象に行ったゲノム解析では、癌抑制遺伝子であるTP53の変異頻度は高分化型が31%、中分化型が46%と、中分化型のほうが多い傾向はあったが、統計的に有意ではなかった。KRAS遺伝子のコドン12、13では高分化型が30%、中分化型が38%と変異頻度に違いはなかった。

 しかし、変異の仕方を示す変異スペクトラムを見ると、KRAS遺伝子のコドン12、13において、プリン塩基がピリミジン塩基に変わる、もしくはその逆のピリミジン塩基がプリン塩基に変わる塩基転換(transversion)変異(G:C→T:A)が、中分化型で57%と、高分化型の23%よりも有意に多かった(p<0.05)。一方、プリン塩基同士、ピリミジン塩基同士の塩基置換(transition)変異(G:C→A:T)は中分化型で43%、高分化型は68%を占めた。「中分化型では、自然突然変異であるtransition変異よりも、酸化ストレスなどの環境因子による突然変異と考えられているtransversion変異が多い」と掛地氏はいう。

 また予後との関係は、高分化型に比べ、中分化型の生存率は低く、特に高分化型でKRAS遺伝子変異がない場合に比べて、中分化型でKRAS遺伝子変異を有する場合は有意に予後不良だった(p=0.0285)。

 掛地氏は「中分化型腺癌は進行例が多く、リンパ節転移や肝転移も多く認められるため、厳重な経過観察と手術、化学療法による集学的治療が必要と考える」とまとめた。

 なおワークショップのディスカッションでは、病理医によって高分化型、中分化型の判断が異なり、施設によっては中分化型の増加が認められない場合もあるとし、実態調査の必要性も提案された。