血清亜鉛濃度は肝機能や肝線維化の指標になる可能性が示された。術前に亜鉛を補充することによって、肝機能の改善も期待できそうだ。7月16日から18日に大阪市で開催された第64回日本消化器外科学会総会で、大阪市立総合医療センター肝胆膵外科の山本訓史氏が発表した。

 亜鉛はアミノ酸代謝や核酸代謝に必須な微量元素で、強い抗酸化作用を持つことが知られている。

 対象は2007年7月から2008年12月に肝切除を施行した75人。術前の血清亜鉛濃度と肝機能および肝線維化との関係を検討した。

 その結果、血清亜鉛濃度はアミノ酸の代謝能を示す総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR)と正の相関を示した。また血清亜鉛濃度は、肝機能を示す血清アルブミン濃度およびプロトロンビン(PT)活性と正の相関、ICG(インドシアニン・グリーン)15分値と負の相関を示した。この3項目は肝障害度を判定する際に用いられる項目でもあり、「亜鉛の濃度は術前の肝予備能を反映している可能性がある」と山本氏は述べた。

 さらに血清亜鉛濃度は、肝線維化の指標であるP3Pおよび4型コラーゲン・7Sの血清濃度とも負の相関を示した。実際、組織学的に見ると、線維化の程度がF0〜3(正常〜高度線維化)に比べてF4(肝硬変)では亜鉛濃度が有意に低いことが確認された(p<0.05)。

 肝細胞癌は再発によって再手術を行うことが少なくない。そのため術前の亜鉛濃度が低い患者には、次の手術のことも考慮して、「肝切除後のフォローの際、亜鉛濃度の補正も必要と考えている」と山本氏。

 なお術後の肝機能を血清トランスアミナーゼと血清総ビリルビンで評価したが、術前の血清亜鉛濃度とは関連性が見られなかった。これについて山本氏は、「術後の肝機能は、腹腔鏡と開腹など術式による違いが大きい。今後症例数を増やして再検討したい」と話した。