大腸癌の手術といえば、手術前日夜からの絶食が当然だと考えられている。しかし、近年欧州を中心に、絶食に意味がないとする報告が出てきた。国立病院機構大阪医療センター外科の安井昌義氏らは、こうした海外の報告を基に「術前の経口炭水化物摂取」を周術期の栄養管理に取り入れた成果について、7月16日から18日まで大阪市で開催されている第64回日本消化器外科学会総会で発表した。

 具体的には、午前中に手術が予定されている場合には、前日夜に炭水化物含有ジュース225mL、当日朝は手術室への入室2時間前までに同ジュース225mLを飲んでもらう。午後の手術であれば、その後さらに午前10時までにもう一度同ジュース225mLを飲んでもらう。ジュースは、市販のパラチノース含有ジュースと野菜ジュースを合わせて1回分が200kcalになるように調整している。

 2008年11月から2009年1月までにこの栄養管理を行った患者82人で、誤嚥や逆流、気道閉塞などの合併症はなかった。また、糖尿病患者にもこの栄養管理を行ったが、術後に高血糖はみられず、安全な方法と考えられた。

 82人にアンケートを行ったところ、「飲料提供はある方がよい」が85%、「どちらでもよい」が15%となり、「ない方がよい」と答えた患者はいなかった。また、「空腹感が満たされた」54%、「空腹感が一時的に満たされた」41%と、9割を超える患者が空腹感を抑えることができたと答えた。

 安井氏は「術前の経口炭水化物摂取によって特に合併症は生じず、患者の評価も高かった。ジュースを飲んでもらうことで手術時に視野が悪くなるなどと感じることもなく、非常に有用な栄養管理法と考えている」とまとめた。