患者負担の少ない手術法の開発などに伴い、従来は手術を回避してきた高齢の胃癌患者にも、積極的に手術が考慮されるようになってきた。しかし、高齢者では意外な術後合併症が問題になることもある。7月16日から18日まで大阪市で開催されている第64回日本消化器外科学会総会で、高齢者の術後のせん妄について2演題がポスター発表された。

 せん妄とは、幻覚がみえたり激しい興奮状態になるといった意識障害を来した状態のこと。認知症とは異なり、手術による一時的な環境の変化が原因で、元に戻ることがほとんどだ。とはいえ、点滴チューブを抜いてしまったり、暴れてベッドから落ちたりする可能性もあり、手術後のケアにおいて大きな問題となっている。

 国立病院機構仙台医療センター外科の手島伸氏らは、過去5年間に手術を行った80歳以上の胃癌患者39人(男性27人、女性12人、平均年齢83.1歳)の術後経過を調べた。集中治療室での管理が必要だったのは4人、術後在院日数は平均23日(9〜92日)、在院中に2人が死亡した(うち1人は癌ではなく脳梗塞による死亡)。術後合併症は、肺炎2人、吻合部狭窄2人、呼吸不全や腸閉塞などが1人ずつだった。術後せん妄は15人(38.5%)にみられた。

 手島氏は「当院では胃癌の手術を行う患者のうち、80歳以上の高齢者が8.8%を占め、近年増加傾向にある。せん妄を予防するため、術前に認知機能を評価したり、手術中の麻酔の深さや術後の鎮痛に気を付けたり、睡眠・覚醒の概日リズムを早く取り戻せるよう、術後早期から身体活動を開始してもらうといった対策を取っている」と話した。

 順天堂大学附属浦安病院外科の李慶文氏らは、2001年1月から2008年12月までに胃癌手術を行った75歳以上の高齢者86人の術後経過を報告。術後合併症は、感染症が11人と最も多く、次いで肺炎5人などだった。せん妄は20人(23.3%)にみられた。せん妄の関連因子を探るため、性別や身体状態、癌の進行度や手術の術式などに分けて検討を行ったところ、身体状態が悪い患者ではせん妄が生じる可能性が高く(p<0.05)、注意が必要であることがわかった。

 2施設で対象とした年齢は異なるが、せん妄がみられた割合は約2〜4割と高い。高齢者に対する胃癌の手術適応については、こうしたリスクも十分考慮して判断すべきだろう。