抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体ベバシズマブを使用することで、切除不能だった大腸癌の多発肝転移が切除可能になるという治療成績が報告された。大腸癌肝転移の治療法は、着実に変わりつつあるようだ。7月16日から18日に大阪市で開催されている日本消化器外科学会総会で、新潟県立がんセンター新潟病院外科の瀧井康公氏が発表した。

 瀧井氏は、まず、同病院における過去の多発肝転移に対する抗癌剤治療の実績について報告した。高用量5FUを毎週肝動注して行ったケースでは、52人中3人(6%)で根治的肝切除が可能になっただけだった。臨床試験として参加した術前IRIS(イリノテカンとS-1の併用)療法では、11人中2人(18.2%)で根治的肝切除が可能だった。一方、FOLFOXレジメンにベバシズマブを併用した場合は、根治的肝切除が不能だった15人中8人(53.3%)で、根治的肝切除が可能となった。

 これとは別に瀧井氏らは、2007年7月から2009年3月までに同病院でベバシズマブ投与後に肝切除が行われた12人の結果を検討した。12人のうち7人が切除不能を理由とするベバシズマブの投与だった。

 mFOLFOX6療法にベバシズマブを加えた治療をファーストラインとして実施し、セカンドラインとしてFOLFIRI療法にベバシズマブの併用(3人のみでそのうち1人はFOLFIRIのみ)が行われた。mFOLFOX6の投与サイクル数は6回から17回で、効果は部分奏効(PR)が10人で安定状態(SD)が2人だった。肝切除式は、部分切除(2個から5個)が5人で最も多く、拡大葉切除に加えて部分切除(1個から2個)を行ったのが4人と、次いで多かった。

 出血量は35mLから1120mLで3人に輸血が行われた。術後合併症には胆汁漏が2人、断端出血、腹壁出血、骨盤内出血が1人ずつで、基本的には安全に投与された。