婦人科悪性腫瘍の治療が骨密度に与える影響についての経時的追跡から、骨密度減少に最も影響を及ぼすのは両側卵巣摘出術であり、婦人科術後化学療法は両側卵巣摘出術による骨密度減少を促進させないことが示唆された。7月19日から21日まで東京・台場で開催された第54回日本婦人科腫瘍学会学術講演会で、山形大学医学部産科婦人科学講座の高橋一広氏が発表した。

 骨粗鬆症には多くのリスク因子があり、婦人科悪性腫瘍の治療では、両側卵巣摘出術、化学療法と長期の入院生活がリスク因子となると考えられる。ただし、婦人科悪性腫瘍の治療を受けた患者の骨密度減少に関する検討は後方視的な研究が多く、前方視的な検討は少ない。

 そのため高橋氏らは、骨密度減少のリスク因子である両側卵巣摘出術に加えて、化学療法が骨密度に及ぼす影響について、前方視的に調査を行った。調査項目は、化学療法の有無と骨密度、化学療法レジメンと骨密度、入院日数と骨密度とした。

 対象は、2007年から2011年までに有経女性で悪性腫瘍(境界悪性を含む)と診断された50人。卵巣を温存した群(温存群)、両側卵巣摘出術を行った群(摘出群)、両側卵巣摘出術と化学療法を併用した群(併用群)の3群に対象を分けた。各群の治療前後における骨密度をDXA(dual-energy X-ray absorptiometry)法で測定し、骨代謝の状態は骨代謝マーカーである尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)、血中骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)の測定により判定した。

 温存群は12人(子宮頸癌11人、卵巣癌1人)、摘出群は16人(子宮体癌12人、卵巣癌4人)、併用群は22人(子宮頸癌6人、子宮体癌6人、卵巣癌10人)となった。平均年齢はそれぞれ37.5±7.9歳、44.9±5.9歳、43.8±5.7歳で、温存群で有意に低かった。また血圧も、併用群の平均の収縮期血圧128.8±19.5mmHg、拡張期血圧72.9±9.6mmHgと比べて、温存群はそれぞれ111.3±9.9mmHg、63.5±7.7mmHgで有意に低かった。エストラジオール、卵胞刺激ホルモンの術前の値は、3群間で有意差はなかった。

 尿中NTx値は、温存群では術前と比べて術後2年までの値に差はなかった。しかし、摘出群と併用群では、術前と比べて術後半年から有意に高値となり(p<0.001)、術後2年まで継続した。

 血中BAP値も、温存群では術前から術後2年までの値に差はなかった。しかし、摘出群と併用群では、術後半年から有意に高値となり(それぞれp<0.01、p<0.05)、術後2年まで継続した。

 骨密度は、温存群では術前と比べて術後2年まで変化を認めなかったが、摘出群と併用群では、術前と比べて術後1年から2年にかけて有意に低下していた(いずれもp<0.001)。

 術後1年と2年の骨密度の変化率をみると、温存群ではそれぞれ0.2%と0.6%だったのに対し、摘出群では−7.2%と−9.3%、併用群では−6.7%と−9.6%となった。摘出群と併用群の間には、術後1年と2年の骨密度の変化率に有意差は認めなかった。

 併用群の術後1年間において、化学療法のレジメン(化学療法併用放射線治療[CCRT]、TC療法[パクリタキセル、カルボプラチン]、DC療法[ドセタキセル、カルボプラチン])、および入院日数の違いは、骨密度の変化に影響を与えなかった。

 高橋氏は「両側卵巣摘出術を行った有経女性の骨密度の減少率は、閉経後の女性と比べても大きい。癌の治療が成功した後の生活も考慮し、QOLが維持できるよう、骨密度減少への対処も検討する必要がある」と話した。