卵巣明細胞腺癌1期において、術後化学療法の有無による予後の違いをみたレトロスペクティブ解析で、1a期では術後化学療法を施行しなくても再発例や死亡例がないことから術後化学療法を省略できる可能性があることが示唆された。また1c期では化学療法による生存改善は見られるものの、有意差がなかったことが、がん研有明病院でのデータで示された。三井記念病院産婦人科の高田恭臣氏らが、7月19日から21日に東京都内で開催された第52回日本婦人科腫瘍学会学術講演会で発表した。

 卵巣がん治療ガイドライン(2010年版)では、staging laparotomyの後、明細胞腺癌では1a期から、他の組織型では1c期から術後化学療法の施行が推奨されている。これは早期卵巣癌の術後補助療法を検討した2つの無作為化試験(ICON1、ACTION)の結果に基づく。しかし両試験とも明細胞腺癌の割合は14-15%であり、厳密なstaging手術を行った群では初回化学療法の有無で予後に差がなかった。

 このため、がん研有明病院では、staging laparotomyで完全切除できた卵巣明細胞腺癌1期の患者では術後化学療法を省略していた時期があったという。そこで、卵巣明細胞腺癌1期患者において、術後化学療法の有無と予後との関連性が分析された。

 対象は、2000年から2009年に根治術で卵巣明細胞腺癌1期と診断された患者73人。このうち1a期が20人、Ic期が53人。観察期間中央値は55カ月。術後化学療法は1a期では4人、Ic期では26人に行われ、イリノテカンやパクリタキセル等が使用された。

 この結果、患者全体では、5年無増悪生存(PFS)率が化学療法あり群で83.3%、化学療法なし群で75.1%(p=0.522)、5年生存率はそれぞれ88.3%、84.0%(p=0.654)で有意な違いはなかった。

 1a期に限ると、化学療法の有無に関わりなく、再発、死亡はなかった。1c期でも、5年PFS率が化学療法あり群で80.8%、化学療法なし群で61.6%(p=0.178)、5年生存率はそれぞれ86.4%、75.7%(p=0.388)で有意差はなかった。

 多変量解析の結果、PFSおよび全生存において、腹膜細胞診陽性、被膜浸潤が有意な予後因子であり、術後化学療法は予後規定因子とはならなかった。

 このため研究グループは、「単施設での検討だが、後腹膜リンパ節郭清を含む根治術により診断された明細胞腺癌1a期では、術後化学療法を省略できる可能性がある」とした。また「1c期では、術後化学療法を行った群で生存率が改善する傾向にあったが有意差はなく、その効果は充分とはいえない。多数例での検討が望まれる」と話した。