来年秋の発刊を目指し、現在改訂中の子宮体がん治療ガイドライン2013年度版で、絨毛性疾患の章を新設することが明らかになった。7月21日まで東京都内で開催された第52回日本婦人科腫瘍学会学術講演会で、現在改訂作業中の子宮体がん治療ガイドラインのコンセンサスミーティングが開かれ、今改訂の目玉となる絨毛性疾患の章に関して改訂委員らが現時点での案を解説した。

 絨毛性疾患には、臨床的分類と病理学的分類はあるが、通常、臨床的分類が用いられることが多く、非絨毛癌群と絨毛癌群、中間型の3つに大別される。

 昨年には、絨毛性疾患取り扱い規約第3版が出版され、臨床的分類と続発症の診断基準が改訂されたばかりだ。それに伴い、治療方針を整理する必要が生じたと判断されたことから、今改訂で新たに絨毛性疾患の章を新設することが決定した。

 改訂されるガイドラインでは、新設した「絨毛性疾患」の章の中に6つのクリニカル・クエスチョンを用意する予定だ。絨毛性疾患のうち、胞状奇胎を除いた、化学療法や摘出手術が必要になる絨毛性腫瘍を対象にし、治療方針を示す。

 6つのクリニカル・クエスチョンは、(1)非絨毛癌群(low risk GTN)に対して推奨される化学療法(2)絨毛癌群(high risk GTN)に対して推奨される化学療法(3)絨毛癌群に対する手術療法の適応(4)絨毛癌群に対する放射線療法の適応(5)PSTT・ETTに対して推奨される治療法(6)奇胎後hCG存続症とhCG低単位持続分泌例に対する対処−−を設定する。

 絨毛性腫瘍では、非絨毛癌群、絨毛癌群ともに化学療法が中心に選択され、高い寛解率が得られることが報告されている。

 同日の会では、東京女子医科大学産婦人科の松井英雄氏が絨毛性腫瘍への化学療法に関するクリニカル・クエスチョンについて解説した。

 まず、「非絨毛癌群に対して推奨される化学療法は?」のクリニカル・クエスチョンについては、有害事象の二次性発癌を考慮し、「メトトレキセートあるいはアクチノマイシンD単剤の選択が推奨される」(グレードC1)とする予定だと説明した。

 また、「絨毛癌群に対して推奨される化学療法は?」に対しては、「メトトレキセート、アクチノマイシンD、エトポシドを含む多剤併用療法が推奨される」とし、グレードC1で推奨すると語った。

 松井氏は、非絨毛癌群の2〜3割の患者では重篤な有害事象や薬剤抵抗性を示し、二次治療が必要となることから、エトポシドや多剤併用療法を含め、薬剤抵抗性患者の治療法を検討する必要があると指摘。さらに、化学療法の追加コース数を検討することも今後の課題として挙げた。さらに、絨毛癌群については、「1割の患者で薬剤抵抗性や再発を繰り返すため、こうした難治性絨毛癌に対し、有効なセカンドラインの化学療法、手術療法の併用や放射線療法を検討するほか、多剤併用療法を最適な追加コース数も検討する必要がある」と語った。

 絨毛癌群に対する手術療法と放射線療法の適応については、東京慈恵会医科大学産婦人科の矢内原臨氏が解説した。

 絨毛性腫瘍では化学療法が中心となるため、手術療法の施行頻度は約10%だ。

 「絨毛癌群に対する手術療法の適応は?」のクリニカル・クエスチョンに対しては、「化学療法抵抗性病変に対する外科的切除は有効である」とするほか、「出血の制御が困難な子宮病巣あるいは脳圧亢進症状を伴う脳転移に対する手術療法は有用である」とし、ともにグレードC1で推奨する方針を示した。子宮摘出術の初回治療の適応は、多量の子宮出血症例や選択的治療症例、二次的治療は化学療法抵抗性症例、化学療法に伴う多量出血症例であると説明し、その寛解率は8〜9割と化学療法と同等であるとした。また、手術症例の48〜84%で化学療法が実施されていることから、子宮摘出後に化学療法を考慮する必要があると解説した。

 「絨毛癌群に対する放射線療法の適応は?」のクリニカル・クエスチョンに対しては、「絨毛癌群の脳転移に対して、全脳照射や定位放射線治療が有用なことがある」(グレードC1)とする予定だ。矢内原氏は、脳転移患者への全脳照射は出血や脳転移再発の予防に一定の効果があるが、その寛解率は44〜67%にとどまり、高頻度に遅発性脳神経毒性が見られるため、寛解が見込める患者に対しては、全脳照射は回避される傾向にあると解説。その上で、個別化した集学的治療(髄腔内メトトレキサート投与を含む多剤併用化学療法、開頭術と定位放射線療法)を実施することで、全脳照射を回避可能であるとした。

 なお、同ガイドラインは、今後さらなる改訂作業が行われ、来年2〜3月にパブリックコメントを募集後、来秋の発刊を目指す方針だ。