プラチナ製剤抵抗性の再発ミュラー管由来癌(PRRMC)に対するレトロスペクティブな検討から、リポソーム化ドキソルビシン(PLD)が有用な可能性が示唆された。ただし、PLDの至適投与順序について、予後の観点から明らかな結果は得られなかった。7月19日から21日まで東京都で開催された第52回日本婦人科腫瘍学会学術講演会で、東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科の嘉谷隆介氏が発表した。

 プラチナ製剤抵抗性のPRRMCの治療は単剤療法が基本であり、薬剤の選択肢は近年増加しているが、その至適投与順序は不明である。嘉谷氏らは、PRRMCに対するPLDの治療効果と有害事象について評価し、その至適投与順序を検討した。

 対象は、2009年から2011年までに同院と附属第三病院でPLD単剤投与を行ったPRRMC患者42人(年齢中央値52歳)。プラチナ製剤抵抗性再発には、初回再発時のみでなく、複数のレジメンの化学療法を施行後にプラチナ製剤抵抗性となった症例も含めた。原発巣では卵巣癌の36人(86%)が最も多く、組織型では漿液性腫瘍の26人(62%)が多かった。初回診断時のFIGOの手術進行期分類では、I−II期が14%、III−IV期が83%だった。PLD投与のサイクル数中央値は4、PLDの初回投与量は50mg/m2が71%、40mg/m2が26%だった。

 その結果、完全奏効(CR)は2%、部分奏効(PR)は5%、安定状態(SD)は33%で得られ、奏効率は7%、病勢コントロール率(DCR)は40%となった。PLD使用後の全生存期間(OS)中央値は37週、無増悪生存期間(PFS)中央値は16週だった。

 有害事象として、グレード3以上の血液毒性では、白血球減少が24%、貧血が22%に発現した。グレード3以上の非血液毒性では、食欲不振32%、嘔気/嘔吐が27%に発現した。またPLDの投与に関連すると考えられる間質性肺炎が2人に発現し、投与を中止した。

 さらに42人を、プラチナ製剤抵抗性となってからPLD単剤を最初に投与したA群(28人)と2-3レジメン目に投与したB群(14人)に分け、プラチナ製剤抵抗性となった後の生存期間を比較検討した。
 
 両群の年齢、原発巣、病期に有意差は認めなかった。初回治療からプラチナ製剤抵抗性再発までの期間の中央値は、A群121週、B群111週で、プラチナ製剤を含むレジメン数の中央値は両群ともに2だった。プラチナ製剤抵抗性再発後のレジメン数の中央値は、A群2、B群3で、B群で1レジメン目に使用された薬剤ではタキサンが43%で最も多く、イリノテカン、エトポシドを含むレジメンが21%で次いだ。PLD投与のサイクル数中央値は、A群4.5、B群2.5だった。PLDの投与量は50mg/m2がA群75%、B群64%、40mg/2がA群21%、B群36%だった。

 プラチナ製剤抵抗性となってからのOS中央値は、A群43週、B群51週、ハザード比は1.55(95%信頼区間:0.76−3.49)で、有意差は認めなかった(p=0.211)。

 カプランマイヤー曲線ではB群でOSが良好な可能性が示されたが、B群ではプラチナ製剤抵抗性となった後に全例に2レジメン以上の化学療法が施行されているのに対し、A群では1レジメン目にPLDを投与し化学療法が終了となった症例も含まれる。そのため、プラチナ製剤抵抗性再発後に2レジメン以上施行した患者に限定して比較すると、OS中央値はA群55週、B群51週、ハザード比は0.78(95%信頼区間:0.28−2.14)となり、やはり有意差は認めなかった(p=0.613)。

 今回の結果と、症例数が50人を超える海外の報告を比較すると、奏効率は今回の結果でやや低かったが、DCR、OS、PFSに大きな差は認めなかった。奏効率が低かった要因として、海外の報告では初回再発例のみ、あるいは初回または2回目の再発例を対象としているのに対し、再発回数を問わない対象としたためと推測された。
 
 嘉谷氏は「今後、治療期間や無治療期間(TFI)など、QOLを含めた追加検討が必要。PLDの供給が再開されたら、メリットと副作用を十分に説明し、患者と相談して使用の有無を決めていきたい」と話した。