早期子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮体癌根治手術の検討から、内視鏡認定医と婦人科腫瘍認定医が協力することにより、開腹手術手技のほとんどが腹腔鏡下で再現可能であり、術式の標準化も可能であることが示された。7月19日から21日まで東京都で開催されている第52回日本婦人科腫瘍学会学術講演会で、順天堂大学医学部附属順天堂医院産科・婦人科の寺尾泰久氏が発表した。

 「子宮体がん治療ガイドライン2009年度版」(日本婦人科腫瘍学会/編)では、腹腔鏡下手術は「標準術式としては確立しておらず、日常診療での実践を推奨できない」とされている。腹腔鏡下子宮体癌根治術の問題点には、開腹手術と同等の精度や完遂度が保てるかという点、膣断端再発およびポートサイト再発のリスク、腫瘍の飛散のリスクなどがある。

 寺尾氏らは、腹腔鏡下子宮体癌根治術の開始時のコンセプトとして、開腹手技を腹腔鏡下で再現できれば、手術の完遂度、精度を保ちつつ、安全でかつ根治性が担保された標準術式が確立されると考えた。
 
 実施にあたっては、以下の問題点が考えられた。まず倫理面では、標準術式として推奨されるだけのデータがなく、保険収載されていない手術技術であるため、患者に十分説明する必要がある。根治的な面では、開腹手術と同様の手術が行えるか、癌診療であることから婦人科腫瘍認定医が行うべきか、という問題がある。技術的な面では、制限された状況下での手術の遂行が可能か、内視鏡手術であることから内視鏡技術認定医が行うべきか、という問題がある。

 これらの問題点を解決するため、同院では内視鏡技術認定医と婦人科腫瘍認定医が協力し、治療を行うこととした。内視鏡技術認定医は腹腔鏡技術を提供し、婦人科腫瘍認定医は症例の確保とインフォームドコンセント、手術前後のフォローアップを担当する。

 適応を子宮体癌で筋層浸潤1/2以内、G1またはG2の症例とし、術式は腹腔鏡下子宮全摘術、両側付属器切除術、骨盤リンパ節郭清術とした。目標は、術式の標準化、使用デバイスの統一、倫理的配慮である。

 腹腔鏡下手術で開腹手術手技の再現が可能であるか否かについて、寺尾氏らはパイロット試験で骨盤リンパ節郭清を行い検討した。その結果、腹腔鏡下手術でも開腹手術とほぼ同等の手技が可能であることが確認された。

 手術進行期分類Ia期までと予想される子宮体癌で、これまでに腹腔鏡下手術が行われた患者は18人だった。このうち術後病理診断の結果が得られた17人(平均年齢54.1歳)において、平均出血量は107g、平均摘出リンパ節数は29.3個、平均手術時間は5時間9分だった。病期が同じで開腹手術を行った患者20人(同53.4歳)では、平均出血量は402g、平均摘出リンパ節数は22.6個、平均手術時間は4時間4分だった。開腹手術と比較しても、十分な切除と郭清が可能だった。

 寺尾氏らはこの腹腔鏡下手術を先進医療として申請し、2011年7月1日に承認されている。同院の患者1人当たりの先進医療に係る費用、すなわち保険外併用療養費は455440円である。術式を標準化し、使用するデバイスを統一し、医療材料などをパック化することで、手術のコストも統一可能となった。

 寺尾氏は「手術手技に習熟する必要はあるが、内視鏡認定医と婦人科腫瘍認定医の協力により、一握りのエキスパートでなくても施行可能と考えられる。ただし、当術式が有効な標準術式として確立するためには、長期予後などさらにデータの集積を行う必要がある」と述べた。