E-カドヘリンの減弱やSnail、Slug核内染色陽性で定義された上皮間葉転換(EMT)は、子宮体癌の独立した予後因子であることが示された。7月22日から札幌市で開催された第50回日本婦人科腫瘍学会で、大阪医科大学産婦人科の田中良道氏が発表した。

 EMT(Epithelial Mesenchymal Transition)は上皮細胞が間葉系細胞へと性質を転換する現象を差す。近年、腫瘍細胞がEMT現象によって形態を変化させ運動能を獲得することで浸潤や転移に関与することが示唆されている。また最近、細胞接着因子であるE-カドヘリンが転写因子Snailによって抑制されることが明らかにされ、E-カドヘリンの減弱やSnailの核内移行がEMTの指標となることや悪性度と相関することが報告されている。

 ただし、婦人科癌では報告が少ないため、田中氏らは子宮体癌においてEMT現象が臨床病理学的因子や予後と関連するかどうかを検討するため、E-カドヘリン、Snail、さらにSnailと同様にE-カドヘリン発現にかかわるSlugを対象に解析を行った。

 同院で初回手術を行った、肉腫を除く子宮体癌354例(異型内膜増殖症17例、類内膜腺癌252例、漿液性腺癌18例、明細胞腺癌10例、癌肉腫22例、腺棘・腺扁平上皮癌27例、その他8例)のパラフィン切片から組織標本を作製し、E-カドヘリン、Snail、Slugの免疫染色を行って臨床病理学的因子、予後と比較検討した。

 免疫染色の評価方法は、E-カドヘリンについて免疫染色が腫瘍細胞の10%未満の場合はスコア0、腫瘍細胞の10%以上で免疫染色が起こるが低度の場合をスコア1+、中等度を2+、高度な場合を3+とし、スコア3+以上をE-カドヘリン維持、スコア0〜2+をE-カドヘリン減弱とした。Snail、Slugについては核染色が腫瘍細胞の1%未満をスコア0、腫瘍細胞の1%以上で核が染色される低度の場合を1+、腫瘍細胞の2〜5%で核が染色される中等度を2+、腫瘍細胞の5%以上で核が染色される高度を3+とし、スコア0を陰性、スコア1+〜3+を陽性とした。そして、E-カドヘリン減弱かつSnailまたはSlug核内染色陽性をEMT現象(+)と評価するとした。

 免疫染色の結果、E-カドヘリン、Snail、Slugともに組織型、FIGOステージ、筋層浸潤、腹水の状態、リンパ節転移と強い相関があることが明らかとなった。なお、Slugは350例中13例しか核内染色が認められなかったが、その13例中10例が癌肉腫という特徴を持っていた。

 組織型とEMTとの関連を解析した結果、過形成ではグレード1、2と比べグレード3で有意にEMT現象(+)が多かった。癌肉腫では6割以上がEMT現象(+)だった。進行期別に見たところ、ステージI、IIに比べてステージIII、IVは有意にEMT現象(+)が多かった。

 1/2以上の筋層浸潤が見られたのはEMT現象(−)例に比べてEMT現象(+)例は2倍程度と多く、腹水陽性もEMT現象(−)では1割程度だったが、EMT現象(+)では3割を超え有意に高かった。リンパ節転移陽性についてもEMT現象(−)に比べてEMT現象(+)例は2倍程度多かった。

 原発巣と転移巣とで3つの因子の発現を比較したが、差は認められなかった。

 E-カドヘリン、Snail、Slugの発現別に無増悪生存期間、全生存期間を検討した結果、3つの因子とも陽性例は陰性例に比べて有意に予後が悪いことが示された。多変量解析を行った結果、EMT現象は独立した予後因子であることが明らかになった。

 こうした結果から田中氏は、「E-カドヘリンの減弱、SnailやSlugの核内染色陽性からみたEMT現象は組織型、分化度、進行期、筋層浸潤1/2以上、腹水細胞診陽性、リンパ節転移陽性と相関し、PFSやOSが有意に短縮していた。EMT現象は子宮体癌の独立した予後因子である」と締めくくった。