子宮頸癌子宮体癌卵巣癌の術前に静脈血栓塞栓症VTE)があれば治療方針を再検討する必要がある。そこで、筑波大学産婦人科の田中勝洋氏は、婦人科癌の治療前VTEの頻度や危険因子を検討し、その結果を7月22日から札幌で開催された第50回日本婦人科腫瘍学会学術講演会で報告した。

 対象は、2004年11月から2009年7月の期間に初回治療を行った症例で、子宮頸癌272例、子宮体癌243例、卵巣癌165例だった。血管超音波断層法による治療前VTEの検索は、卵巣癌では全例で、子宮頸癌/子宮体癌ではD-dimer値が1.5μg/mL以上の症例で実施した。なお、DVTが認められた場合には肺血流シンチグラム/CTを行って治療方針の再検討を行った。

 子宮頸癌272例の内訳は、FIGOステージ1が37.1%、2が25.7%、3が19.1%、4が6.6%。組織型は扁平上皮癌が82.7%と大半を占め、他には腺癌が13.0%、腺扁平上皮癌が2.2%などだった。

 子宮体癌243例の内訳は、FIGOステージ1が61.3%、2が9.9%、3が14.4%、4が14.4%。組織型は類内膜癌が87.2%と大半を占め、他には漿液癌が7.0%、明細胞癌が3.7%などだった。

 卵巣癌165例の内訳は、浸潤型が135例、境界型が30例で、浸潤型ではFIGOステージ1が33.3%、2が5.2%、3が44.4%、4が17.2%を、境界型ではステージ1が80%を占めた。組織型は浸潤型では漿液癌が48.9%、粘液癌が9.6%、類内膜癌が7.4%、明細胞癌が29.6%、未分化癌が4.4%を、境界型では粘液癌が66.7%、漿液癌が26.6%を占めた。

 なお、術前にVTEが発見されたのは、子宮頸癌では13例(4.8%)、子宮体癌では27例(11.1%)、卵巣癌では41例(24.8%)であった。

 次に各癌におけるVTEの危険因子を検討。まず、子宮頸癌におけるVTEの危険因子として、単変量解析では年齢(60歳以上)、子宮頸部の腫瘍サイズ(50mm以上)、FIGOステージIV、傍大動脈リンパ節腫大が同定され、多変量解析では年齢(60歳以上)、子宮頸部の腫瘍サイズ(50mm以上)、FIFOステージIVが有意な因子であることが明らかとなった。

 また、子宮体癌におけるVTEの危険因子として、単変量解析では子宮体部の腫瘍サイズ(60mm以上)、子宮筋への浸潤、骨盤リンパ節腫大、傍大動脈リンパ節腫大、大量腹水、卵巣転移、組織型(非類内膜癌、漿液癌、明細胞癌)が同定され、多変量解析では子宮外進展、組織型(非類内膜癌)が有意な因子であることが明らかとなった。

 さらに、卵巣癌におけるVTEの危険因子として、単変量解析では年齢(60歳以上)、糖尿病合併、大量腹水、組織型(腺癌、明細胞癌)が同定され、多変量解析では大量腹水、組織型(明細胞癌)が有意な因子であることが明らかとなった。

 各癌における独立した危険因子をまとめると、子宮頸癌では年齢、腫瘍径、病変の広がり、子宮体癌では病変の広がりと組織型、卵巣癌では組織型と大量腹水となった。

 以上の検討から田中氏は、婦人科癌における術前VTEの頻度は卵巣癌が最も高く、次いで子宮体癌、子宮頸癌の順であり、その危険因子は原発巣ごとに組織型、癌の進展様式、大量腹水を伴うかどうかなどの相違があると結論した。