広汎子宮全摘術における鼠径上リンパ節郭清の省略は合併症の軽減につながり、患者の予後に影響を与えないことが示唆された。7月22日から札幌市で開催された第50回日本婦人科腫瘍学会で、関西労災病院婦人科の安藤亮介氏が発表した。

 広汎子宮全摘術においては、根治性を高めるために後腹膜リンパ節郭清が行われている。しかし、郭清に伴い術後合併症としてリンパ浮腫、腸閉塞、リンパ管炎が問題となる。

 一方、リンパ節郭清後に、温存されたリンパ管枝から側副路が形成されると考えられており、広汎子宮全摘術に対して鼠径上リンパ節の温存が術後合併症の軽減、予防につながることが最近報告された。早期子宮頸癌において鼠径上リンパ節への転移は認められないと考えられている。

 同院では2010年7月から広汎子宮全摘術の際、術前画像診断および術中所見で明らかな転移が疑われない場合、鼠径上リンパ節郭清を省略している。今回、この郭清の省略に関しての安全性を自験例を用いて検討した結果を報告した。

 対象は2006年から2010年までの間に広汎子宮全摘術を行った子宮頸癌Ia2〜IIb期の48例。鼠径上リンパ節郭清群37例と非郭清群11例の2群をレトロスペクティブに検討した。追跡期間中央値は非郭清群51.1カ月(4.0-61.3カ月)、郭清群36.2カ月(2.8-51.3カ月)。

 対象者の子宮頸癌の組織型は郭清群が扁平上皮癌25例、腺癌7例、腺扁平上皮癌2例、その他3例に対し、非郭清群は扁平上皮癌10例、腺癌1例だった。

 臨床病期は、郭清群がIa2期1例、Ib1期17例、Ib2期0例、IIa期5例、IIb期14例、非郭清群がIa2期0例、Ib1期3例、Ib2期1例、IIa期1例、IIb期6例だった。

 手術時間は、郭清群では325分(中央値)に対して非郭清群302分(中央値)で有意差は見られなかった。出血量も郭清群343mL(中央値)に対して非郭清群530mL(中央値)と、こちらも有意な差は見られなかった。

 手術時、リンパ節転移については、非郭清群で4例、郭清群で3例に骨盤リンパ節転移が認められたものの、郭清群において鼠径上リンパ節転移は認められなかった。

 そして術後合併症と再発について解析した結果、まず術後合併症については、郭清群においてリンパ浮腫4例(10.8%)、腸閉塞2例(5.4%)に見られたが、非郭清群ではともに0例だった。リンパ管炎はともに見られなかった。

 その他の術後合併症としては、郭清群において創部離開2例、骨盤内膿瘍1例、尿路感染1例、感染2例、非郭清群では尿路膣婁2例、腹膜瘢痕ヘルニア1例、腹腔内出血1例、骨盤内膿瘍1例が認められた。

 再発については、郭清群に7例、非郭清群に3例認められ、郭清群では膣断端に4例、内腸骨リンパ節1例、縦隔リンパ節1例、外陰部1例で、非郭清群では膣断端1例、閉鎖リンパ節1例、傍大動脈リンパ節1例だった。しかし、鼠径上リンパ節での再発は両群ともに0例だった。

 なお、郭清群37例中5例に術後補助療法として放射線療法を行っているが、術後合併症は認められなかった。

 これらの結果から安藤氏は、「広汎子宮全摘術における鼠径上リンパ節郭清の省略は合併症の軽減につながる一方で、患者の予後に影響を与えないと考えられる」と締めくくった。