局所進行切除不能膵癌に対するS-1併用化学放射線療法は、S-1単独療法と比べて生存期間および無増悪生存期間(PFS)を改善し、忍容性にも優れていることが国内フェーズ2、3試験で示された。10月24日から26日まで京都で開催された第51回日本癌治療学会総会で、鹿児島大学医学部の新地洋之氏らが発表した。

 局所進行切除不能膵癌に対する標準治療である化学放射線療法には5-FUやゲムシタビンが用いられるが、いまだ満足する成績ではない。そこで、それらの薬剤に代えてS-1による化学放射線療法の安全性と有効性を検証するS-1併用化学放射線療法のフェーズ2試験を実施した。さらに、その後のS-1併用化学放射線療法の優越性を検証するS-1単独化学療法とのランダム化フェーズ3試験を行った。

 局所進行切除不能膵癌に対するS-1併用化学放射線療法のフェーズ1試験の結果に基づき、S-1は80mg/m2/日を3週間投与とし、放射線療法は加速過分割照射法による体外照射放射線療法を1回1.25Gyを1日2 回、週5日間を4週間で、計50Gy施行することと決定した。また維持化学療法として、S-1 80mg/m2/日の2週投与2週休薬を1年間を目標に継続した。

 フェーズ2試験には、腹膜播種および肝転移を認めない局所進行切除不能膵癌患者50例を登録した。患者背景は、性別(男性24例、女性26例)、年齢中央値66歳、ECOG PS 0が44例、1が6例、腫瘍部位(頭部36例、体尾部14例)、腫瘍サイズ(中央値4cm)、血清CEA(中央値3.7ng/mL)、血清CA19.9(中央値343U/mL)だった。

 有害事象については、全グレードの白血球減少が40%、嘔気34%、食欲不振28%などが多くみられたが、そのうちグレード3、4の重篤有害事象は白血球減少症6%、発疹2%、疲労4%であり、同療法の忍容性は良好であることが示された。1年間の維持療法期間においてもグレード1、2の好中球減少症5%、食欲不振30%などが主な有害事象で、重篤な有害事象は認められなかった。

 抗腫瘍効果は、部分奏効(PR)30%、病勢安定(SD)46%だった。PRとSDを合わせた病勢コントロール率は76%、および局所制御率では95%という有望な結果が得られた。

 生存期間中央値(MST)は14.3カ月(5.4-74カ月)、1年生存率62%、2年生存率28%、3年生存率14%、4年生存率10%、5年生存率8%だった。「現在も3例が長期生存しており、外科手術と比較してもS-1併用化学放射線療法の成績は同等以上だ」と新地氏は述べた。

 予測因子解析では、単変量解析による治療前腫瘍サイズや治療前血中CA19-9値には有意差はなかったが、治療前PS(0:1)、抗腫瘍効果(PR:SD以下)、治療後腫瘍サイズ(4cm以上:4cm未満)、治療後再燃形式(局所:遠隔転移)に有意差が認められた(それぞれp<0.01、p<0.0001、p<0.01、p<0.01)。多変量解析では抗腫瘍効果でPRが得られた症例(ハザード比0.178、p=0.0005、95%信頼区間:0.067‐0.471)、および再燃形式が遠隔転移ではなく局所再燃例(ハザード比4.183、p=0.0009、95%信頼区間:1.795‐9.748)が長期予後因子だった。

 このフェーズ2試験の結果をもとに、S-1併用化学放射線療法とS-1単独療法を比較するフェーズ3試験を行った。審査腹腔鏡検査で遠隔転移や微小転移がないことを確認した局所進行切除不能膵癌患者を無作為に割り付けた。

 患者背景は、S-1単独群(16例)、S-1併用化学放射線療法群(17例)ともに年齢が約64歳、血清CEA値はS-1単独群4.0±3.0ng/mL、S-1併用化学放射線療法群4.7±4.6ng/mL、血清CA19-9値はS-1単独群801±1507U/mL、S-1併用化学放射線療法群341±376U/mLで、2群間で統計学的有意差は認められなかった。

 追跡の結果、S-1併用化学放射線療法群のMSTは19.7カ月、S-1単独群では14.9カ月で、統計学的に有意ではなかったが、S-1併用化学放射線療法が良好な傾向が認められた(p=0.073)。PFSについてもS-1併用化学放射線療法群で9.1カ月、S-1単独群では5.4カ月で、S-1併用化学放射線療法群で良好な傾向だった(p=0.080)。

 これらのことから、新地氏は「進行膵癌に対するS-1併用化学放射線療法は安全で、有効な治療法である可能性が示唆された。今後、本療法を主体とした集学的治療が期待できる」と語った。