日本人の前立腺癌患者に対するGn-RHアンタゴニストであるデガレリクスとビカルタミドを用いたCAB療法により、治療開始早期からテストステロンやPSAを低下させ、前立腺容積の縮小や排尿機能の改善が認められることが示された。10月24日から26日まで京都市で開催された第51回日本癌治療学会学術集会で、北彩都病院泌尿器科の徳光正行氏が発表した。

 デガレリクスはGn-RHアンタゴニストで、LH-RHアゴニストで認められる投与開始直後のテストステロンの一過性の上昇がなく、投与数日で去勢域に低下することや、PSA値20ng/mL超の症例に対するPSA再燃を延長することなどが、デガレリクス単独投与の有効性を検討した国内フェーズ2試験などで示されている。

 今回徳光氏らは、新規前立腺癌患者に対し、デガレリクスとビカルタミドを併用したCAB療法の治療成績について検討した。また、再燃癌に対するLH-RHアゴニストからの交代療法についても検討した。

 対象は2012年10月のデガレリクス市販後、治療を行った35人。このうちCAB療法を行ったのは25人、交代療法を行ったのは10人だった。PSA値、テストステロン値、ALP値、残尿量、前立腺症状スコア(IPSS)、過活動膀胱症状質問票(OABSS)、最大尿流率(MFR)、平均尿流率(AFR)、有害事象について検討した。

 CAB療法を行った25人の患者背景は、年齢73.5歳、テストステロン値4.37ng/mL、PSA中央値17.68ng/mL、限局性前立腺癌12人(48%)、局所進行前立腺癌7人(28.0%)、転移性前立腺癌6人(24.0%)だった。Gleasonスコアが5〜6だったのが6人(24.0%)、7〜10だったのが19人(76.0%)だった。

 治療の結果、テストステロン値は投与開始2週間後から全例去勢域に低下し、24週まで維持されていた。

 PSA値は、2週後に67.5%、4週後に87.5%、12週後には98.7%の減少率が得られた。なお、デガレリクス単独投与を行った国内フェーズ2試験では投与から2週後のPSA減少率は62.5%、4週後で80.1%であり、CAB療法は単独投与に比べてPSA減少率が高いと考えられた。

 前立腺容積は4週後に20.8%、12週後に34.2%、24週後に41.2%減少した。残尿量も4週後に21.8%、12週後15.0%、24週後に17.0%減少していた。徳光氏は「LH-RHアゴニストを用いた治療に比べて早期に大きく改善する印象だ」と指摘した。また、IPSSの症状スコア(IPSS-S値)、QOL(IPSS-L値)やMFR、AFRも速やかに改善していた。

 CAB療法を行った25人のうち、PSA値の低下速度の違いで2グループに分けられ、急速低下群(13人、うち局所進行例は4人、転移例は4人)は2週後に79.9%、4週後に91.4%、12週後に98.6%減少していたのに対し、緩徐低下群(12人、うち局所進行例は3人、転移例は2人)は2週後に44.2%、4週後に82.9%、12週後に98.9%減少していた。

 急速低下群と緩徐低下群の背景を比較すると、緩徐低下群のPSA値が10.3ng/mLだったのに対して急速低下群は27.8ng/mL、IPSS-S値が緩徐低下群は7.1だったのに対して急速低下群は11.4、IPSS-L値が緩徐低下群が2.7だったのに対して急速低下群は3.9であり、急速低下群はPSA高値で症状スコアの高い症例だった。12週後になると2群間でPSA値に差が認められなかった。

 治療効果予測について検討した結果、2週目におけるPSA値の急速低下症例は、4、24週目のIPSS-S値、4週目のIPSS-L値の有意な低下や24週目の尿流率、12〜24週目の残尿量の有意な改善が予測できると考えられた。また、IPSS-S値10ポイント以上は、4〜24週でIPSS-S値の有意な低下を、PSA値30ng/mL以上は癌検出コア数、前立腺容積の有意な高値、2週目のPSA値の有意な低下、4〜24週目のIPSS-S、-L値の有意な低下を予測できると考えられた。

 LH-RHアゴニストからの交替療法を行った10人について検討した結果、患者背景は、癌検出時は年齢74.7歳、PSA値147.75ng/mL、前立腺容積36.4mL、Gleasonスコアは7、8、9、10がそれぞれ1人、3人、3人、3人。ステージII、III、IVがそれぞれ1人、2人、7人だった。デガレリクスへの交替時における背景は79歳、治療開始から交替までの期間は50.4カ月、PSA中央値4.67ng/mL、テストステロン中央値0.05ng/mL、ALP値282 U/Lだった。交替前の治療は全例リュープロレリン、ゴセレリン、抗アンドロゲン薬が投与されており、ステロイド、エストラムスチン、ドセタキセルの使用症例もあった。

 交替後の奏効は、3人に病勢安定(SD)が得られたが、7人は病勢進行(PD)だった。

 SDが得られた3人を見てみると、1人は癌検出から28カ月後に投与されており、交替時PSA値21.28ng/mL、テストステロン値0.05ng/mLで8カ月間効果が得られた。2人目は癌検出から56カ月後に投与されており、交替時PSA値0.21ng/mL、テストステロン値0.09ng/mLで5カ月間効果が得られた。3人目は癌検出から41カ月後に投与されており、交替時PSA値15.34ng/mL、テストステロン値0.93ng/mLで4カ月間効果が得られた。徳光氏は、「交替療法で効果が得られた症例はPSA値が低い時期に、1剤目のLH-RHアゴニスト治療直後に交替していた傾向があることから、去勢抵抗性前立腺癌の初期段階では効果が得られるのではないか」と指摘した。

 全35人における有害事象は、注射部位局所反応が認められたのが31人(88.6%)で、うち疼痛29人、腫脹31人、発赤31人だったが、いずれも軽微だった。1人に有熱性蜂窩織炎が認められ、LH-RHアゴニストへの変更を要した。ホットフラッシュは12人(34.3%)に認められ、肝機能障害は認められなかった。

 これらの結果から徳光氏は、「デガレリクス+ビカルタミドによるCAB療法は速やかにPSA値の低下、前立腺容積の減少、排尿機能の改善が得られた。有害事象は軽微で、高齢者でも安全に施行できた。今後、さらに長期に追跡していく予定」と語った。