HER2陽性の切除不能進行再発胃癌患者に対するDCS療法(ドセタキセル+シスプラチン+S-1)+トラスツズマブ併用療法(DCS-T療法)の認容性が確認された。また、患者の46.7%で根治手術が行われたことから、有望な治療法となる可能性が示唆された。札幌医科大学腫瘍・血液内科の佐藤康史氏らが、10月24日から26日まで京都市で開催された第51回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 近年、切除不能胃癌の治療成績はS-1を中心とした化学療法の発展によって向上しつつあるが、化学療法単独での根治は極めて困難なのが現状だ。

 佐藤氏らは、切除不能患者であっても化学療法で十分な奏効が得られた患者に手術を行うことで治癒を目指せる可能性があると考え、DCS療法の臨床試験を実施してきた。奏効率は87.1%、生存期間(OS)中央値は687日で、多くの症例でダウンステージングし、根治手術が実施できた患者は31例中7例(22.6%)だったこと、また手術を施行できた患者の3年生存率は70%で、施行できなかった患者の15.2%に比べて予後が改善しているという。

 一方、HER2陽性胃癌に対するトラスツズマブの有効性がXP(カペシタビン+シスプラチン)療法との併用で示されており、トラスツズマブはタキサン系をはじめ多くの抗癌剤との併用においても上乗せ効果が期待されている。

 そこで佐藤氏らは、HER2陽性の切除不能胃癌患者を対象に、DCS療法にトラスツズマブを併用するDCS-T療法の認容性試験を行った。

 対象は、20歳以上80歳未満、PS 0-2、左室駆出率が50%以上のHER2陽性(IHC法で3+、もしくはIHC法2+かつFISH陽性)の切除不能進行再発胃癌患者15例。

 3週間を1コースとし、S-1は80mg/m2を2週間連日投与1週間休薬した。day8にシスプラチン60mg/m2とドセタキセル50mg/m2、トラスツズマブ(初回8mg/kg、2回目以降は6mg/kg)を投与した。有害事象が発現した場合は、次コースで投与量の減量を行った。

 主要評価項目はDCS-T療法の認容性、副次評価項目は安全性、抗腫瘍効果、生存期間とした。3コース目までのプロトコル完遂率85%を満たす場合に認容性があると判定した。
 
 患者背景は、年齢中央値が60歳(範囲:34-76)、男性10例女性5例。PS 0が9例、1が4例、2が2例。組織型は分化型が11例、未分化型が4例。腫瘍部位は上部6例、中間部8例、下部1例。HER2の発現状態はIHC法3+が12例、IHC法2+かつFISH+が3例。T3が10例、T4aが4例、N2が3例、N3が10例。肝転移ありは7例、腹膜転移は4例、リンパ節転移が10例、肺転移が3例で、転移個数2個以上の患者は8例だった。

 全例で3コースまでの投与を完遂した。投与コース中央値は5(範囲:3-10)だった。

 奏効率は100%で、全例で部分奏効(PR)だった。患者の53%が1コース目で、40%は2コース目で奏効が得られた。

 グレード3以上の血液毒性は、好中球減少が86.7%、白血球減少が73.3%、発熱性好中球減少症が13.3%、貧血が13.3%。非血液毒性は、食欲不振が26.7%、下痢が26.7%、口内炎が13.3%で、いずれも管理可能だった。

 9例でダウンステージングが確認され、うち7例で手術を実施。全例で根治度R0だった。組織学的効果は、原発巣でグレード1b以上が85.7%、転移巣で100%。重篤な周術期合併症や死亡は認められず、この7例は全例生存中だ。

 15例の無増悪生存期間(PFS)中央値は12.8カ月、1年PFS率は54.7%、OS中央値は未達で、1年OS率は80.0%だった。

 これらの結果から佐藤氏は、「HER2陽性の切除不能胃癌に対し、DCS-T療法の認容性が示された。手術可能となりR0切除が得られている症例が約半数得られたことから、DCS-T療法はHER2陽性の切除不能胃癌に対して根治手術を期待できる有望な治療法となる可能性がある」と指摘した。

 しかし、手術実施が予後向上につながるかは現時点で不明であることや、手術の適応やタイミングを今後検討する必要があるとし、「外科医と緊密な連携をとり、DCS-T療法の確立を目指したい」と語った。