進行性腎細胞癌患者に対するスニチニブ投与において、重篤な有害事象を回避しつつ十分な臨床効果を得るために、薬物治療モニタリング(TDM)の有用性を示唆するデータをこれまでも報告してきた秋田大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学分野の土谷順彦氏は、血中トラフ濃度が有害事象や無増悪生存期間(PFS)などの予測に有用であることを報告した。10月24日から26日まで京都市で開催された第51回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 進行性腎細胞癌患者に対するスニチニブの有効性は高いが、投与量が同じでも血中濃度の個体差は大きいことが知られている。これまで土谷氏らはTDMが重篤な有害事象を回避し、十分な臨床効果を得るために有用である可能性を報告してきた。

 今回土谷氏らは、スニチニブの血中トラフ濃度と有害事象、治療転帰との関係を検討した。対象は、スニチニブ治療を行った25人で、年齢の中央値は67歳、男性21人、女性4人だった。

 第1サイクル7日目の時点で、スニチニブ(SU)と、活性代謝物デスエチルスニチニブ(DES)の血中トラフ濃度を液体クロマトグラフ・質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて測定し、得られた値と、1サイクル目で認められた有害事象、1サイクル目の服薬期間、無増悪生存期間(PFS)の関係を調べた。

 個々の有害事象について、グレード1が発生した患者とグレード2以上が発生した患者に分けて、両群のトラフ濃度を調べた。甲状腺機能低下と疲労については、グレード1の患者に比べグレード2以上を経験した患者の方が、SU+DESトラフ濃度とSUトラフ濃度が有意に高かった。DESのみを対象としてトラフ濃度と有害事象について検討した結果、甲状腺機能低下、疲労に加えて、貧血、食欲低下、口内炎、悪心についても、グレード2以上経験者のほうが有意に高かった。このように、DESのトラフ濃度高値はより広範な有害事象と有意な関係を示したため、DESも測定することにより有害事象予測の精度は上がると考えられた。

 1サイクル目の服薬日数は、14日までが9例、15-21日までが9例、22日-28日までが7例だった。トラフ濃度と服薬日数の関係を調べたところ、SU+DES、SUのトラフ濃度は、服薬日数21日未満のグループと21日以上のグループの間で有意な差を示さなかった。一方、DESのみで検討すると、21日未満の集団でトラフ濃度は有意に高く(p<0.005)、21日以上継続できていた患者の値は低かった。

 3週時点でSU+DES、SU、DESのトラフ濃度-時間曲線を描き、それぞれカットオフ値を求めて、患者をカットオフ値以上群とカットオフ値未満群に層別化し、服薬期間の中央値を推定したところ、SU+DES、SU、DESの全てで、カットオフ値以上群のほうが服薬継続期間の中央値は有意に短かった。

 一方、服薬期間とPFSの間には有意な関係は見られなかった。全体の服薬期間の中央値である18日以上と18日未満の患者のPFSを比較しても有意差は見られず、服薬期間が2週未満、2週以上3週未満、3週以上4週未満に層別化し比較しても、差は有意ではなかった。

 次に、7日目のトラフ濃度の中央値を基準として患者を2群に分けて検討したところ、SUのトラフ濃度において、中央値より高値の集団では、低値群に比べPFSが有意に長かった(p=0.021)。SU+DES、DESについても統計学的には有意でなかったものの、同様の傾向が見られた(それぞれp=0.128、p=0.072)。

 進行性腎細胞癌患者に対するスニチニブ投与において、血中濃度が高い症例の服薬期間中央値は14日で、21日以上服薬できた症例の濃度は低値であったこと、服薬期間とPFSには相関が認められないが、血中濃度が高かったグループではPFSが延長したことから、高血圧や甲状腺機能低下症、手足症候群など効果と相関することが示されている有害事象だけでなく、TDMも併用した服薬管理を行うことは有効かつ安全性が高まると締めくくった。

 投与スケジュールについては、標準的な4週間投与2週間休薬の代替として、2週間投与1週間休薬も有効であることが示されつつあり、今回も血中濃度維持の重要性が示唆されたことから、減量した標準スケジュールよりも血中濃度と相対用量強度を維持した代替スケジュールの方がより有効である可能性があると指摘した。