化学療法導入予定の患者に対し、看護師が口腔外科受診を勧めるとともにセルフケアの支援を行うことで、患者の全身状態にかかわらず口腔粘膜炎の発症が減り、患者の意識も向上させられることが、単施設の調査で明らかになった。10月24日から26日まで京都で開催された第51回日本癌治療学会総会で、市立函館病院のがん化学療法認定看護師、松丸亜紀氏が発表した。

 同施設では患者の口腔ケアへの介入として、2011 年から、化学療法の導入を予定している患者に対し、化学療法施行前に口腔外科の受診を開始することとしている。しかし、実際には、2011 年度の口腔外科受診率は45%と徹底されておらず、また、PSが保たれている患者においても口腔粘膜炎の発症が多く認められたことから、2012 年度より全患者を対象に、看護師が主体となって患者に対し口腔外科受診の依頼と、セルフケア支援を継続して行うこととした。

 今回、松丸氏らは、看護師によるセルフケア支援導入後の口腔粘膜炎の発生状況の現状調査と今後の課題を報告した。

 対象は2011年から2013 年に初回化学療法を施行した患者166人。2011年6月から2012年9月までに登録した78例がセルフケア支援非介入群、それ以降の2012年10月から2013年3月に登録した88例がセルフケア支援介入群だった。血液内科の患者は2011年以前より患者にセルフケア支援を行っていたため除外した。

 セルフケア支援非介入群と介入群の患者背景は、年齢中央値が67.8歳と67.5歳、性別では男性が多く、治療についてはフルオロウラシルやカペシタビンを含むレジメンがそれぞれ24例/33例、分子標的薬を含むレジメンが7例/2例、その他の薬剤レジメンが47例/53例だった。

 セルフケア支援を行うようになる前と後で、口腔外科受診率と口腔粘膜炎の発生率を比較検討した。患者個人の特定がなされないように倫理的配慮をして後方視的に検討した。口腔粘膜炎の評価方法はCTCAE Ver.4、統計解析はFisherの正確検定を用いた。

 その結果、セルフケア支援を行うようになる前である非介入群における化学療法施行前の口腔外科受診率は55%だったのに対し、セルフケア支援を行うようになった介入群の受診率は94%と向上したことが明らかとなった。また、グレード2以上の口腔粘膜炎は、非介入群は21%だったが介入群は2%に減少し、口腔カンジタの発症も9%から1%へと減少した(それぞれp=0.0002、p=0.0154)。

 さらに、治療薬別の解析においても、フルオロウラシル/カペシタビンを含むレジメンを受けた患者では、口腔粘膜炎の発症は非介入群46%、介入群12%と介入群で減少しており、その他の薬剤による治療を受けた患者においても非介入群36%、介入群7%で介入により発症数が減少した(それぞれp=0.0063、p=0.0005)。

 以上のことから、全患者に対する看護師による口腔ケアのセルフケア支援介入は、口腔外科受診率の向上とともに患者自身が口腔環境を維持するためのセルフケア能力を身につけることが出来るとまとめた。松丸氏は、「外来化学療法が増加している現在、自宅での患者や家族のセルフケア能力の維持を支えていくことは重要課題である」と結んだ。