直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)における局所制御効果を予測する因子として、癌幹細胞マーカーのCD133、Sox2、Oct4、c-Mycは有用である可能性が報告された。4つのマーカーのうち、いずれか2つを発現している患者では術前CRTによる局所制御効果が不十分だった。防衛医科大学校外科の神藤英二氏らが、10月24日から26日まで京都市で開催された第51回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 直腸癌への術前CRTは、局所再発率を改善することや、肛門括約筋温存手術への適応拡大が可能であることが報告されている。一方、合併症として縫合不全や肛門機能低下などが起こることが報告されており、術前CRT適応患者の選択が重要だと考えられている。

 神藤氏らはこれまでに、術前生検組織において大腸癌幹細胞マーカーとされるCD133の発現が術前CRTによる局所制御効果を予測する因子として有用であることを発表している。

 今回神藤氏らは、直腸癌患者を対象に、術前CRT前の生検組織における癌幹細胞マーカーの発現状態と局所制御効果との関係を検討した。

 対象は腹膜翻転部以下に下縁を有する直腸癌139例。このうち、術前CRTを実施した患者(以下、CRT群)は2001-2007年に同院で短期CRT施行後切除した患者(術前CRT前はcT3以深)78例、手術単独群は1998-2007年に術前CRTを施行しなかったpT3以深の患者61例。

 CRT群における短期CRTは4Gyの全骨盤照射5日間で、同時にUFT400mgを7日間投与し、照射後3〜4週間後に手術を行った。

 生検組織の採取時期は、CRT群は術前CRT前、手術単独群は術前に行い、癌幹細胞マーカー(CD133、Sox2、Oct4、c-Myc)の免疫染色を行った。カットオフ値は、CD133は20%、Sox2は5%、Oct4は7%、c-Mycは20%とし、2種類以上発現している場合を高発現群、1種類以下の場合は低発現群とした。

 各癌幹細胞マーカーの陽性率は、CD133が19%、Sox2が19%、Oct4が35%、c-Mycが34%だった。

 高発現しているマーカーが2種類以上だった患者(高発現群)は31%で、CRT群が28%、手術単独群が34%だった。CRT群と手術単独群の陽性率に大きな差は見られなかった。

 まず全患者を対象に、局所無再発生存(EFS)の有意な因子を検討したところ、術前CRT実施とリンパ節転移の有無が抽出された。手術単独群の5年EFS率は79%だったのに対しCRT群は92%だった(p=0.021)。また、リンパ節転移がある患者の5年局所EFS率は80%、転移のない患者は92%(p=0.047)だった。

 さらに多変量解析でEFSの有意な因子を検討したところ、術前CRT実施が抽出された(ハザード比3.31、95%信頼区間:1.13-9.70、p=0.029)。

 次に、癌幹細胞マーカー高発現群を対象に解析した。5年局所EFS率を見ると、リンパ節転移陰性例が陽性例と比べて有意に高く(93%対54%、p=0.0078)、66歳未満の患者は66歳以上の患者と比べて有意に良好だった(85%対56%、p=0.035)。一方、術前CRTの有無は局所制御に影響しなかった(75%対74%、p=0.64)。

 多変量解析により高発現群における5年局所EFS率の有意な因子を検討した結果、リンパ節転移の有無のみ抽出された(ハザード比10.2、p=0.030)。

 同様に、癌幹細胞マーカー低発現群において5年局所EFS率を見ると、CRT群は手術単独群と比べて有意に良好だったが(98%対81%、p=0.0068)、リンパ節転移の有無は局所制御に影響しなかった(92%対92%、p=0.91)。

 多変量解析に抽出された低発現群における5年局所EFS率の有意な因子は、術前CRT実施のみだった(ハザード比10.44、p=0.030)。

 これらの結果から神藤氏は、「治療前生検組織において、癌幹細胞マーカーが2因子以上発現する患者では術前CRTによる局所制御効果は不十分だった。これらの癌幹細胞マーカーは術前CRTの適応を決定する有力な指標になり得ると考えられた」とまとめた。4つのマーカーのうち、いずれについても、1つのマーカーだけでは局所制御効果の予測能は十分でなかったことも補足した。

 今後は術前CRTにおいて、短期CRTではなく、標準的なCRTのプロトコル(1.8Gy×5週間照射、合計45Gy)を実施した患者を対象にした際も、これらの癌幹細胞マーカーが局所制御効果を予測する因子となりうるかについて検討したいとしている。