口腔扁平上皮癌において6個以上の頸部リンパ節転移および被膜外浸潤は強力な予後因子であり、術後化学放射線療法や放射線療法施行群は非施行群に比べて有意に生存率が高かったことが、最大規模の症例を登録した国内多施設共同研究で示された。こらの症例群に対しては、放射線による術後補助療法を検討すべきことが示唆された。10月24日から26日まで京都で開催された第51回日本癌治療学会総会で、長崎大学大学院の柳本惣市氏らが発表した。

 口腔癌の頸部リンパ節転移陽性(pN+)における多発転移や被膜外浸潤(ECS)は重要な予後不良因子であり、術後補助療法の適応と考えられるが、口腔癌のみを対象とした大規模な検討はこれまで行われていなかった。

 そこで柳本氏らは、ハイリスクであるpN+群に対する治療法を確立するため、過去の治療法と予後の現状を調べる目的で多施設共同後向き研究を行った。

 2002年1月から2011年12月までの10年間に各施設を初診した口腔原発の扁平上皮癌症例のうち、頸部郭清が行われ、pN+と診断された491例を対象とした。後発郭清と再発時郭清は除外した。評価項目は、5年累積疾患特異的生存率(DSS)および全生存率(OS)とした。

 患者背景では、男性314例/女性177例、年齢中央値67歳で、原発部位で多かったのは舌42.8%、下顎歯肉23%、上顎歯肉および硬口蓋13.6%などで、cT分類ではT1/2/3/4a/4bがそれぞれ2.9/32.0/14.7/42.3/7.1%、cN分類ではN0/1/2a/2b/2c/3がそれぞれ17.5/28.5/0.6/37.5/14.1/1.8%だった。半数近くが化学療法(19.9%)、放射線療法(14.9%)、化学放射線療法(14.9%)による前治療を受けていた。

 リンパ節転移(pN+)個数は平均3.53個、中央値2個(1-44)で、被膜外浸潤(ECS)は127 例(25.9%)にみられた。術後補助療法として化学療法46例(9.4%)、放射線療法119例(24.2%)、化学放射線療法49例(10%)が施行されていた。

 解析の結果、5年累積疾患特異的生存率(5y-DSS)は58.2%で,全生存率(5y-OS)は52.2%だった。pN+ 1個、2-5個、6個以上の間にcut-offline を設定できた。

 生存に影響を及ぼす因子として多変量解析を行った結果、cT分類、ECSの有無、患側のレベルIV/Vの頸部転移が独立した予測因子だった。

 この結果をもとに柳本氏らは、pN+個数とECSの有無に基づき、3つのグループに分類した。そして、これらのハイリスクグループ、Group1(pN+1個およびECS−)124例、Group2(pN+2-5個およびECS−)204例、Group3(pN+≧6個および/またはECS+)163例で、術後RT放射線療法と化学療法の効果を分析した。

 各グループで、術後療法に放射線療法を含まないRT非施行例と、放射線療法(RT)/化学放射線療法(CCRT)施行例の5年DSSとOSを算出した。

 その結果、Group1のDSSは、RT非施行群(110例)76.8%に対し、RT/CCRT施行群(14例)31.3%(p=0.001)、OSではそれぞれ70.9%、31.3%(p=0.001)であり、放射線療法施行群の生存率はむしろ低かった。

 Group2のDSSは、RT非施行群(118例)64.7%、RT/CCRT施行群(86例)68.6%(p=0.652)、OSではそれぞれ59.5%、60.8%(p=0.724)で、いずれの療法も生存率改善への有効性は認められなかった。

 Group3では、DSSはRT非施行群(87例)23.5%、RT/CCRT施行群(76例)48.3%、OSではそれぞれ17.1%、43.9%だった。Group3は最もハイリスクで、術後に放射線を含む治療を施行した群では、非施行群に比べて生存率が有意に高かった。

 また、術前化学放射線療法(NAC/RT)群とNAC/RT非施行群、術前RT施行群と非施行群が生存に及ぼす影響について比較した結果、術前療法による生存の改善は認められなかった。

 さらに、最も再発のリスクの高いGroup3において、術後RT/CCRTが生存に及ぼす影響を調べた。RT併用化学療法の内訳は、白金製剤および/またはタキサン(23例)と3週毎シスプラチン(CDDP)100mg/m2×3が12例だった。

 白金製剤/タキサン併用CCRT群では、RT単独よりも生存率は低かった。また、CDDP併用CCRT群についてもRT単独群とCCRT群はほぼ同様の生存曲線を示しており、pN+症例に対する術後補助療法において、いずれの化学療法レジメンも、有意差は認められないがRTへの上乗せ効果はないとみられた。

 以上により、「口腔癌pN+症例において、6個以上の多発転移あるいは被膜外浸潤は強力な予後因子で、本症例群に対して放射線療法を主体とした術後補助療法が必要と考えられる」と柳本氏らは結論づけた。