遠隔転移を有する膵癌の1次治療としてのFOLFIRINOX療法は、海外のACCORD II試験の結果と同様、日本人患者においても有効であることが国内フェーズ2試験の中間解析で示された。骨髄抑制に関連する有害事象が高頻度で認められたが管理可能であり、適切な症例選択や治療計画の調整によりFOLFIRINOX療法は転移性膵癌の1次治療になりうることが示唆された。10月24日から京都で開催されている第51回日本癌治療学会総会で、国立がん研究センター東病院の池田公史氏が発表した。

 欧米で行われたフェーズ3のACCORD II試験で、遠隔転移を有する膵癌(MPC)に対する1次治療としてFOLFIRINOX療法(オキサリプラチン+l-LV+CTP-11+5-FU)がゲムシタビン(GEM) 単独療法に比べて全生存期間(OS)(11.1カ月対6.8カ月)および無増悪生存期間(PFS)(6.4カ月対3.3カ月)を有意に改善することが報告され、現在、転移性膵癌の1次治療として推奨されている。

 池田氏らは、日本におけるFOLFIRINOX療法の有効性と安全性を検証する目的で、未治療のMPCを対象にフェーズ2試験を実施した。

 主要評価項目は抗腫瘍効果(奏効率:RR)、副次的評価項目はPFS、OS、有害事象とした。2011月6月〜 2012 年9月の間に登録された症例は36例で、目標症例数35例を満たした。

 FOLFLIRINOX療法の投与方法は、1日目にまず制吐剤(パロノセトロン、アプレピタント+ステロイド)を投与し、その後オキサリプラチン85mg/m2を120分、ロイコボリン(l−LV )200mg/ m2を120分、イリノテカン(CPT-11)180mg/m2を90分、5-FUボーラス投与400mg/ m2に続き、5-FU 2400mg/m2を46時間かけて持続静注とした。2週間を1サイクルとして中止基準に該当するまで投与を繰り返した。初回コースのみ入院で行うことと規定した。

 患者の選択基準は、腺癌または腺扁平上皮癌で、年齢は20-75歳、ECOG PSが0-1、測定可能な遠隔転移を有する(RECIST ver.1.0)こととし、骨髄、肝・腎機能については、Hb値9.0g/dL以上、総ビリルビン値が正常上限以下、白血球数1万/mm3以下、AST、ALT が正常値の2.5倍以下、好中球数2000/mm3以上、血清クレアチニン1.2mg/dL以下、血小板数10万/mm3以上、CRP2.0mg/dL以下とした。また、2つの遺伝子多型UGT1A1*6とUGT1A1*28のいずれかがホモ接合体またはいずれもヘテロ接合体として持つ症例は除外した。

 36例の患者背景は、男性24人/女性12人、年齢中央値は61.5歳、PSは0が21例/1が15例、組織・細胞診断では腺癌33例/腺扁平上皮癌3例、胆管ステント留置例6例、原発巣部位は膵頭部7例/膵頭部以外28例/なし(切除)1例、転移部位は肝臓31例/リンパ節20例/脾臓1例、UGT1A(1*6/28)では野生型/野生型25例、野生型/ヘテロ型6例、ヘテロ型/野生型5例だった。

 全体の投与サイクル中央値は8(1-18)。L-OHP、CPT-11、5-FU(bolus)、5-FU(持続静注)、l−LVの相対投薬強度中央値はそれぞれ71%、69.6%、15.9%、80.3%、82.7%だった。

 有効性では、完全奏効(CR)/部分奏効(PR)/安定(SD)/進行(PD)がそれぞれ0例/14例/11例/10例だった。RR は38.9%(95%信頼区間:23.1-56.5)、病勢コントロール率(DCR)は69.4%(95%信頼区間:51.9-83.7)。効果発現までの期間中央値は49日(35-120)、奏効期間中央値は170日(42-287)だった。

 PFS 中央値は5.6カ月(95%信頼区間:3.0-7.8)、OS中央値は10.7カ月(同:6.9-13.2)、1年生存率は41.5%(同:24.5-56.8)で、海外のACCORD II試験の結果とほぼ同様とみられた。

 グレード1以上の有害事象として、好中球減少94.4%、白血球減少91.7%、血小板減少88.9%、貧血86.1%が、8割以上の患者で認められた。コリン作動性症候群(発汗、ろれつが回らない、腹部違和感など)が33.3%にみられたが、アトロピンもしくはブスコバン投与により全例が回復した。

 グレード 3 以上の主な有害事象としては、好中球数減少が77.8%、発熱性好中球減少症が22.2%(全例1サイクル目に発症)に認められ、発熱性好中球減少症についてはACCORD II試験の5.4%と比較して日本人患者ではより高率で発症すると考えられた。これらの骨髄抑制に対するG-CSFの使用率は52.8%だった。その他の重篤有害事象は血小板数減少、貧血、食欲減退が11.1%、悪心、下痢が8.3% などで、治療関連死はなかった。

 全36例中35例が治療を中止した。理由は、増悪27例、有害事象7例、被験者拒否/その他が1例だった。また、後治療のレジメンは、33例のうち28例がGEMを含む治療を受けていた。

 以上のことから池田氏は、「日本におけるFOLFIRINOX療法は化学療法未治療のMPC に対し、ACCORD II試験と同様の治療効果を示しており、ACCORD II 試験に比べて骨髄抑制に関連する重篤有害事象が高頻度に認められたが、本試験の登録基準を満たすMPC患者に対しては1次治療になり得る」と結んだ。