アンドロゲン除去療法(ADT)による治療が必要な前立腺癌患者に対する、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体アンタゴニストのデガレリクスを用いたCAB療法は、速やかなPSA値、血清テストステロン値の低下が認められることが示された。水戸赤十字病院泌尿器科の野澤英雄氏らが、10月24日から京都市で開催されている第51回日本癌治療学会学術集会で発表した

 デガレリクスは2012年秋に日本で承認され、前立腺癌に対して使用できるようになった。海外の臨床試験では、投与初期からテストステロン低下作用を示すという特徴のほか、LH-RHアゴニストに比べPSA再燃までの期間を延長することも報告されている。一方、日本ではデガレリクスの臨床効果を検討した報告はない。

 今回、野澤氏らは、同院におけるデガレリクスの臨床効果と安全性を検討した。臨床効果の指標として、PSA値、血清テストステロン値、前立腺体積、血清アルカリホスファターゼ(ALP)値を、安全性については同剤投与時の注射部位反応を調べた。

 対象は、同院で前立腺癌と診断され、ADTによる治療が必要な患者47例。デガレリクスは初回240mg、2回目以降は80mgを4週間間隔で12週間皮下投与し、臨床検査値を評価した。また、注射部位反応(疼痛、紅斑、硬結、腫脹、熱感、掻痒感)に関する患者アンケートを初回投与の1週間後と1カ月後、2回目投与以降は投与後1カ月時点で実施した。

 なお、D'Amicoのリスク分類における低リスク群にはデガレリクス単剤投与とし、中リスク、高リスク、局所浸潤例、転移例にはデガレリクスと抗アンドロゲン薬とを併用するCAB療法を実施した。

 患者の年齢中央値は73歳(範囲:61-93)、限局癌のうち低リスク患者は5例、中リスク患者は9例、高リスク患者は17例、局所浸潤例は9例、転移例は7例だった。対象者全体のPSA中央値は11.57ng/mL、テストステロン中央値は3.97ng/mL、Gleasonスコアは6が21%、7が43%、8-10が36%。

 追跡の結果、デガレリクス投与後、PSA値は速やかに低下した。特にCAB療法を行ったグループ(42例、中リスク例、高リスク例、局所浸潤例、転移例)では顕著に低下しており、1週間後に41%低下、1カ月後に93%低下、2カ月後98%低下、3カ月後は99%低下だった。デガレリクス単独投与例(5例)でも1週間後に30%低下、1カ月後65%低下、2カ月後91%低下、3カ月後は93%低下した。4ng/mL以下(基準域)に達した割合は、低リスク例では1カ月後に全例到達し、中リスク例でも1カ月後には67%が到達、高リスク例、局主浸潤例でも1カ月後には8割以上が到達していた。


 血清テストステロン値は投与後速やかに低下し、投与1週間後には全例で去勢レベル(0.5ng/mL未満)に達した。また、0.2ng/mL未満に達した症例の割合は1週間後の段階で76%となった。投与3カ月後においては0.2ng/mL未満を達成できたのは98%となった。

 前立腺体積は、投与1カ月後から有意に低下した。また、限局癌かつ投与前の前立腺体積が30mL以上だったグループ(15例)では、投与後に30mL未満まで低下した患者割合は、1カ月後が40%、3カ月後が60%だった。転移例における血清ALP値を検討した結果、著しい悪化は認められなかった。

 初回投与時に見られた主な注射部位反応は、腫脹(26.2%)、疼痛(23.8%)、硬結(23.8%)だったが、治療を継続していくに従い注射部位反応は軽減し、投与中止に至る患者はいなかった。これは海外の臨床試験結果と同様の傾向だった。

 野澤氏は、「今回の結果からデガレリクスを用いたCAB療法の有用性が示唆された」と語った。また、限局癌患者に対する放射線ネオアジュバント療法においては前立腺癌体積を減少させることが重要であることに触れ、「今回の結果から、デガレリクスによるネオアジュバント療法を行うことで、早期に放射線療法を開始できる可能性が示唆される」と指摘した。