ER陽性・HER2陰性乳癌において、PgRは予後予測因子の1つとして有用であり、至適カットオフ値は20%であると推測されることが示された。埼玉県立がんセンター乳腺外科の黒住献氏が、10月24日から26日まで京都市で開催されている第51回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 ER陽性かつHER2陰性乳癌では、Ki67の値によって予後良好なLuminal Aと予後不良なLuminal Bに分類されるが、最近ではPgRの発現状態も重要な予後因子になる可能性が指摘されている。

 そこで黒住氏は、ER陽性かつHER2陰性乳癌患者においてPgRの発現状態について様々なカットオフ値を設定し、長期予後との関連について検討した。

 対象は、2000-2001年に同院で手術を施行した、ER陽性かつHER2陰性の5mm以上の浸潤性乳癌(非特殊型)患者177例。

 ERは1%以上染色されている場合を陽性とし、HER2陽性はIHC法で3+もしくはIHC法で2+かつFISH法陽性の場合とした。

 患者背景は40歳以上60歳未満が93例、60歳以上が69例、閉経後患者が100例、乳房温存術施行患者が147例、センチネルリンパ節生検単独実施患者は95例、腋窩リンパ節郭清実施は79例だった。T1が47例、T2が110例、N0が95例、N1が72例、ステージIIAが77例、IIBが47例で、症例に偏りはなかったとした。観察期間中央値は131カ月。

 PgRの発現状態は、0%が11.9%、0-1%が2.3%、1-10%が10.2%、10-20%が13.0%、20-33%が5.1%、33-50%が27.1%、50%超が30.5%だった。

 まず、PgR発現状態をJ-Score分類を用いて評価した。J-Score分類は、PgR陽性細胞の比率によって評価する方法で、染色率が0%をScore 0、1%未満をScore 1、1〜10%をScore 2、10〜50%をScore 3a、50%超をScore 3bに分類する。

 J-Score 3bを陽性として、J-Score0-3a群(101例)とJ-Score 3b(76例)で分けた場合、無再発生存(RFS)率と乳癌特異的生存(CSS)率において有意差が見られた(それぞれp=0.0022、p=0.0002)。J-Score 3b群はJ-Score 0-3a群と比べ有意に予後が良好だった。

 次にAllred Score分類を用いてPgRを評価した。Allred Score分類とは、染色された細胞の占有率(Proportion Score)と染色強度(Intensity Score)をそれぞれ評価し、2つの値を合計して8段階(0、2-8)に分類するもの。

 Allred scoreの合計点6をカットオフ値とした場合に、RFS率とCSS率について有意差が認められた(それぞれp=0.0032、p=0.0001)。またAllred Scoreのうちproportion scoreの3をカットオフ値とした場合にRFS率、CSS率について有意差が見られた(p=0.0016、p=0.0001)。

 黒住氏はこれらの結果から、PgRの最適なカットオフ値は10〜33%の範囲内にあると予測し、PgR染色率20%をカットオフ値と設定した。その結果、RFS率、CSS率とも最も有意差が得られた。RFS率はハザード比13.33(p=0.0003)、CSS率は20.78(p<0.0001)。

 多変量解析でRFS、CSSにそれぞれ影響する有意な因子を検討したところ、PgRと組織学的リンパ節転移(pN)が抽出された。PgR20%以上のRFSハザード比は2.52(p=0.006)、CSSハザード比は5.86(p<0.0001)。pN陽性例はそれぞれ3.43(p=0.001)、2.55(p=0.048)だった。

 さらに、核グレード1または2の患者において、PgR発現率20%をカットオフ値とした場合にCSS率について有意差が見られた(ハザード比9.97、p=0.0016)。これまでの報告で核グレードはKi67と有意な相関関係があるとされている。

 これらの結果から黒住氏は、「ER陽性かつHER2陰性乳癌においてPgR発現状態は予後因子の1つとなる可能性が示唆された。その際の至適カットオフ値は20%ではないかと推測された」と語った。また、ER陽性かつHER2陰性乳癌の予後とPgR発現状態の関係についてはまだ不明な点が多く、今後さらに生物学的、臨床学的な検討を重ねる必要があるとした。