全身化学療法を施行した切除不能進行・再発胃癌患者のうち、HER2陽性患者の中枢神経系(CNS)転移頻度はHER2陰性例と比べて高率だったことが報告された。恵佑会札幌病院腫瘍内科の奥田博介氏が、10月24日から26日まで京都市で開催されている第51回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 乳癌のうち、HER2過剰発現例ではCNS転移頻度が高いことが報告されているが、胃癌におけるCNS転移頻度は1%以下ときわめてまれとされる。

 今回奥田氏らは、全身化学療法を施行した切除不能進行・再発胃癌(接合部癌を含む)におけるCNS転移頻度とその臨床病理学的背景を後ろ向きに検討した。

 対象は、2011年3月から2013年2月までに同科で全身化学療法を施行した切除不能進行・再発胃癌患者(接合部癌を含む)60例。HER2陽性は、IHC法で3+、またはIHC法で2+かつFISH法陽性と定義した。

 患者背景は、男性45例女性15例、年齢中央値が62.0歳(範囲:33-81歳)、組織型はIntestinalが58.3%、Diffuseが41.7%。転移臓器個数が2個以上の患者が50%、肺転移有りは16.7%、前化学療法歴有りは50.0%、胃切除歴有りは63.3%。観察期間中央値が194日(範囲:8-570日)。HER2陽性例は20例(33.3%)で、HER2陽性例は全例にトラスツズマブが併用投与された。

 解析の結果、HER2陰性例(40例)においてCNS転移は見られなかった。一方、HER2陽性例では5例(25%)にCNS転移が認められた。このうち前化学療法歴がある患者は3例だった。転移臓器は小脳のみが3例、小脳と大脳が2例で、4例は多発転移、CNS転移が認められた時期は治療開始から222〜414日だった。

 Log-rank検定で、CNS転移と関連する因子を検討したところ、HER2陽性(p=0.002)、転移臓器個数が2個以上(p=0.008)が有意な因子として抽出された。組織型、肺転移の有無、前化学療法歴、胃切除歴は有意な因子ではなかった。Cox回帰分析による単変量解析では転移臓器個数が有意な因子として見出された。

 これらの結果から奥田氏は、「トラスツズマブ併用化学療法を施行したHER2陽性切除不能進行再発胃癌において、特に多臓器転移例ではCNS転移が高率に認められた。化学療法施行期間が200日を超えた場合、CNS転移を念頭に置いた検索を考慮すべき」と語った。

 HER2陽性例でCNS転移頻度が高かったことについては、「HER2陽性例だからCNS転移頻度が高いのか、もしくはトラスツズマブ併用化学療法後に残存した腫瘍がCNS転移となったのかについては不明」と補足。今後は症例を増やすほか、化学療法を未施行の患者も含めた解析を行う方針だ。