進行腎細胞癌に対するスニチニブ治療において、薬剤師が介入して血圧管理の理解度を高めるなどの指導を行うことでアドヒアランスの向上が見られ、予防可能な有害事象による治療中断例を減らせることが示された。10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会で、愛知医科大学病院薬剤部の荒川真紀氏が発表した。

 今回、荒川氏は進行腎細胞癌に対するスニチニブ治療において、薬剤師による高血圧管理を主とした有害事象マネジメントが患者の意識向上に及ぼす影響を検討した。

 対象は、2008年7月から2012年3月までに同院を受診した、スニチニブ治療を受けた進行腎細胞癌15例。

 初回導入時に血圧管理に関する患者の意識・理解度の聞き取り調査を行うとともに、服薬コンプライアンス、高血圧の実態調査とモニタリングを行った。

 また、薬剤師の提案と指導については、患者説明用ツールを用いた高血圧の患者指導を行い、血圧上昇時のフローチャートを作成して血圧上昇時の対応に用いた。なお、血圧測定は、治療開始時と開始後7日ごとに42日目までの期間を集計した。手足症候群と口内炎については予防的な保湿剤、アズレンスルホン酸のうがいの処方を提案し、患者へうがいをするよう指導した。手足の発赤や炎症発現時にはステロイド軟膏への切り替えを提案、口内炎出現の兆候にはキシロカイン含嗽水への切り替えを提案した。

 薬剤師の介入効果の評価には指導前後における血圧管理の実施状況や理解度を比較検討した。

 対象15例の背景は、年齢62.2歳(平均)、MSKCCリスク分類でFavorableリスク2例、Intermediateリスク11例、Poorリスク2例。診断から全身治療開始までの期間が1年未満だったのが6例、1年以上だったのが8例。開始用量は50mgが13例、37.5mgが2例で、スニチニブがファーストライン治療だったのが6例、サイトカイン療法歴があったのが7例、サイトカイン療法後のソラフェニブ投与歴があったのが2例だった。

 出現した有害事象は、口内炎(グレード1が40%、グレード2が20%)、高血圧は全例に見られ、グレード1、2、3、4がそれぞれ6.7%、26.7%、66.7%、0%だった。下痢はグレード1が53.3%、グレード2が6.7%。手足症候群はグレード1、2、3、4がそれぞれ40%、40%、13.3%、0%だった。そのほかの有害事象のうち、グレード3以上で見られたのは血小板減少(53.4%)、好中球減少(26.7%)、貧血(13.3%)だった。

 追跡の結果、初回指導時の血圧管理に関する患者の意識・理解度は不十分で、自宅での血圧測定の実施割合、血圧測定器の所持の有無、正しい血圧測定法を説明できるかどうか、血圧基準値を説明できるかどうかについて、いずれも指導前は10〜40%程度の理解度だったが、薬剤師の指導後で有意に向上していた。全症例で毎日の血圧測定が継続されていた。

 グレード3以上の高血圧は66.7%に認められていたが、血圧上昇時の対応フローチャートに従って対応した結果、血圧コントロールは良好となり、血圧上昇に伴う頭痛などの自覚症状は改善し、治療継続も可能となった。対応フローチャートには、速やかな降圧が必要な場合、アンジオテンシンII受容体拮抗薬+Ca拮抗薬アムロジピン投与としている。血圧上昇が予想される場合には、早期にARBを投与(効果発現までに4週間程度かかる)とし、効果不十分な場合はARB+アムロジピン投与とする。いずれのケースでも最小量から開始、最大量まで増量し、それでも降圧が認められない場合は降圧薬多剤併用を考慮するかもしくは循環器内科へコンサルトする、というものとなっている。アムロジピン使用を推奨するのはスニチニブとの薬物相互作用が最も少ないと考えられるためだ。

 うがいと保湿剤塗布は全例で実施され、その結果、グレード3以上の口内炎は認められなかった。グレード3以上の手足症候群が2例に認められたが、ステロイド軟膏塗布で改善し、グレードは低下していた。

 相対用量強度は、1〜6週目は75.4%、7〜12週目は78.7%、13〜18週目77.3%、19〜24週目67.3%となり、血小板減少や全身倦怠感など予防不可能な有害事象での減量、中断は見られたが、高血圧、手足症候群、口内炎など予防可能な有害事象による減量、中断例は認められなかった。

 全生存期間中央値は28.5カ月、無増悪生存期間中央値は16.4カ月だった。

 これらの結果から荒川氏は、「薬剤師の介入によりアドヒアランスが向上し、治療継続が可能で、その結果、相対用量強度の維持が可能で、生存期間の延長に寄与した可能性がある」とした。また、同院泌尿器科の住友誠氏は、「薬剤および薬物治療に熟知した薬剤師の協力があることで、さまざまな有害事象が発生しうる分子標的治療の継続が可能になった」と連携の意義を強調した。