去勢抵抗性前立腺癌患者(CRPC)に対するペプチドワクチンと低用量デキサメタゾン併用療法は、デキサメタゾン単独療法群と比較してPSA failureまでの期間を有意に延長することが、フェーズ2、前向きランダム化比較試験の中間解析で明らかになった。10月25日から27日まで横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で、近畿大学泌尿器科の植村天受氏が発表した。

 ペプチドワクチン療法は、ペプチドワクチンを皮下注射することによって、注入されたがん抗原ペプチドを抗原提示細胞(樹状細胞)が取り込み、MHC class I上に抗原提示する。そして、T細胞レセプターを介して細胞障害性T細胞(CTL)を活性化する。CTLが誘導されると、癌細胞上にある抗原ペプチドとHLA Class Iの複合体を見つけて攻撃するというメカニズムだ。樹状細胞療法などと異なり、ペプチドを皮下注射する方法で簡便に投与できる。

 以前に行ったCRPC対象のペプチドワクチン療法試験では、HLA-A2/HLA-A24の患者23例のうち28%でPSAの3割減少が確認された。全生存期間(OS)中央値は20カ月(5-37カ月)であった一方で、重篤な有害事象はほとんどなく安全に施行できた。PSAへの著効例や、骨転移やリンパ節転移に著効した症例もわずかながら含まれ、免疫学的には、約70%の症例で細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導され、ペプチドによる特異的免疫が惹起されることが示唆された。

 そこで植村氏らのグループは、既知の知見についてさらに客観的な評価が必要と考え、多施設共同ランダム化フェーズ2試験を計画した。化学療法未治療の去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対するペプチドワクチン+低用量デキサメタゾン併用療法群(ワクチン群)とデキサメタゾン単独療法群(Dx群)の比較試験で、今回、その中間解析結果を報告した。過去に行った試験が化学療法や2次ホルモン療法に抵抗性となった進行性去勢抵抗性前立腺癌が対象だったが、今回報告したフェーズ2試験は化学療法を行う前の去勢抵抗性前立腺癌を対象としている。

 主要エンドポイントは、病勢コントロール率、無増悪生存期間と奏効率の検討、2次エンドポイントは、デキサメタゾン併用による安全性プロファイル、免疫学的反応性、およびQOLの検討とした。

 2012年4月までに、80歳未満、PS0-1で原則12週以上の生存が見込める、化学療法前のCRPC症例(PSA<10ng/mL)の患者82例が登録され、HLAタイピングによるスクリーニングを行った。そのなかから適格とされたHLA-A2、HLA-A24およびHLA-A3スーパーファミリー陽性の71例を、ペプチドワクチン+低用量デキサメタゾン(1mg/日)併用群(36例)と低用量デキサメタゾン(1mg/日)単独群(35例)とにランダムに割り付けた。

 ワクチンは、HLA-A2、A24、A3スーパーファミリーそれぞれに拘束性の9-10アミノ酸からなるペプチド各8種類を準備し、投与前の免疫反応性により個別に最大4種類を選択し各3mgを大腿内側皮下に2週間隔で投与した。Dx群で増悪がみられた患者にはワクチン群へのクロスオーバーが認められた。

 患者背景では、ワクチン群とDx群の平均年齢はそれぞれ68.5歳、67歳、登録時PSA値は4.3ng/mL、5.3ng/mLで、ほとんどがGleason Score 7以上だった。両群の患者背景に有意差はなかった。

 PSA failureまでの期間の中央値は、ワクチン群602日、Dx群210日(p<0.00108)で、ワクチン併用群で有意に延長していた。

 安全性については、注射部位の硬結、発赤、痒みなどが主に認められたが、いずれもグレード1、2の軽度な有害事象だった。
 
 植村氏は、CRPCに対するデキサメタゾン併用ペプチドワクチン療法は安全かつQOLを損なわない治療法であり、化学療法未治療のCRPC患者において有効と思われると結論し、フェーズ3試験を実施する必要があると締めくくった。