結節性硬化症(TSC:tuberous sclerosis complex)に伴い、腎臓に良性腫瘍ができる血管筋脂肪腫(AML:angiomyolipoma)に対するエベロリムスの有効性と安全性を評価した前向きランダム化フェーズ3試験(EXIST-2)の結果、エベロリムスはプラセボに比べ、AMLの腫瘍量を有意に減少させることが示された。同試験に登録された日本人データの解析から、日本人でも同様の効果が得られることも確認された。10月25日から横浜で開催された第50回日本癌治療学会総会で、大阪大学泌尿器科の野々村祝夫氏が発表した。

 TSCは、TSC1およびTSC2遺伝子の異常により発症する遺伝子疾患で、年齢期(胎児期-40歳以上)に応じて特徴的な良性腫瘍が複数発生し、治療後の再発率も高く、対症療法しか存在しないのが現状だ。良性腫瘍には、心横紋筋腫、小児良性脳腫瘍である上衣下巨細胞性星細胞腫SEGA)、および腎臓の血管筋脂肪種(AML)や肺のリンパ脈管筋腫LAM:lymphangioleiomyomatosis)があり、また良性腫瘍による臓器の圧迫により、症状として痙攣発作、皮膚症状などが見られる。

 腎AMLは、TSCの60%以上で発症する良性腫瘍で、治療として腎血管の塞栓療法が行われるが、血流を遮断するため腎不全を起こしやすい。

 疾患の原因となるTSC1/2の遺伝子産物は、細胞増殖に関わるmTOR経路において重要な役割を果たしており、TSC1/2の変異によってmTORC1が活性制御に異常を来し、こうした病態を発症することが明らかになっている。

 EXIST-2試験は、TSCまたは孤発性LAM(sLAM)に伴う腎AML症例に対して、mTOR阻害剤エベロリムスの奏効率をプラセボと比較することを目的に実施された。

 主要エンドポイントは、腎AMLの体積の和が登録時から50%以上縮小した患者の割合(最良総合効果率)とした。ただし、長径1.0cm以上の新たな腫瘍を認めないこと、最小値から20%以上の腎体積の増加が認められないこと、腎AML関連の出血を認めないことを条件とした。

 2次エンドポイントとして、AML増悪までの期間や皮膚病変の奏効率(PGFスコア50%以上の改善)、クレアチニン値による腎機能評価、安全性を評価した。

 登録患者は、18歳以上で、直径3cm以上の腫瘍を1つ以上有する症例118例だった。ランダム化時点で手術が必要と判断された症例、およびランダム化後6カ月以内に腎AML関連の出血または塞栓を認めた症例は除外した。

 エベロリムス(10mg/日)投与群79人とプラセボ群39人に2:1に割付け、腎AMLの進行または許容できない有害事象が発生するまで投与を継続した。また、AML進行時にはクロスオーバーを許可した。

 対象患者の年齢中央値はエベロリムス群32歳、プラセボ群29歳。性別では疾患の特性として女性が多く、男性の約2倍(エベロリムス群:女性52例、男性27例、プラセボ群:それぞれ 26例、13例)。人種では、白人が105例と大半を占め、アジア人は11例で、うち日本人10例が含まれていた(エベロリムス群:白人71例、アジア人7例、その他1例、プラセボ群:それぞれ 34例、4例、1例)。

 腎AMLの最大長径が8cm以上の症例がほぼ3割で、多くの患者が4cm以上の長径を有する腫瘍だった(エベロリムス群:≧8cmが22例、≧4cm <8cmが45例、プラセボ群: それぞれ12例、19例)。

 118例の患者のうち、エベロリムス群79例中72例が、プラセボ群39例中26例が治療を完遂した。

 試験全体での奏効率はエベロリムス群41.8%(33例)、プラセボ群0%(奏効率の差41.8%、95%信頼区間:23.5%、58.4%、p<0.0001)だった。治療開始時から進行/再発までの期間における最良総合効果率は、エベロリムス群で、奏効33例(41.8%)、病勢安定32例(40.5%)、進行1例(1.3%)、評価不能が13例(16.5%)、プラセボ群ではそれぞれ0例、31例(79.5%)、2例(5.1%)、6例(15.4%)。

 日本人登録患者10例では、エベロリムス群7例、プラセボ群3例に割り付けられており、エベロリムス群で奏効率28.6%(2例)、病勢安定が71.4%(5例)で全体と比べてわずかに低いが、ほぼ一致していた。

 AML増悪までの期間中央値はプラセボ群で1.4カ月、エベロリムス群ではまだ到達していない(p<0.0001)。また、皮膚病変の奏効率に関しては、プラセボ0%(95%信頼区間:0.0%-9.5%)に対して、エベロリムス群では26%で、エベロリムス群で有意に高かった。

 エベロリムスの有害事象は、これまでTSC患者に対するエベロリムスの忍容性プロファイルと一致していた。口内炎/口腔内潰瘍形成(78.5%)、感染症(64.6%)、出血(26.6%)、血球減少(22.8%)、挫創(21.5%)、頭痛(21.5%)、咳(20.3%)、高コレステロール血症(20.3%)、倦怠感(17.7%)、悪心(16.5%)、尿路感染(15.2%)、嘔吐(15.2%)で、ほとんどの有害事象はグレード1/2で軽度だった。

 野々村氏らは、エベロリムスはプラセボに比べ、AML腫瘍量を有意に減少させることが示されたとし、TSCおよびsLAM関連のAML患者に対する薬物治療の選択肢となりうると締めくくった。