リピオドールによる肝動脈化学塞栓術TACE)抵抗性の肝細胞癌に対する薬剤溶出性球状塞栓物質を用いたTACEは奏効率55.9%で、生存期間24カ月と良好な成績であることが示された。10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会で、ゲートタワーIGTクリニックの関明彦氏が発表した。

 切除不能肝細胞癌の治療法である肝動脈化学塞栓療法(TACE)において、近年、欧米では、アントラサイクリンなどの抗癌剤を腫瘍内で徐放させる薬剤溶出性球状塞栓物質(DEB:drug-eluting bead)を用いることが主流になりつつある。そこで関氏は日本人のリピオドール不応肝細胞癌を対象に、DEB-TACEの有効性と安全性について、後ろ向きに検討した。

 対象は、外科切除/局所焼灼術が適応でない、エピルビシンを用いたリピオドールTACEへの不応例とし、2008年3月から2011年2月までに同施設にて、同じくエピルビシンを用いたDEB-TACEを施行した切除不能肝細胞癌59 例(男性40人、女性19人)。除外基準として、門脈本幹浸潤(Vp4)、遠隔転移を設定した。

 リピオドールTACE不応例の定義は、リピオドールTACEを施行したにもかかわらず早期局所再発あるいは早期他部位再発を2回以上繰り返した症例もしくはリピオドールTACE施行後に脈管浸潤が出現した症例とした。

 DEBを用いた塞栓物質(DEM)は、アクリル酸ナトリウムとビニルアルコールの共重合体高吸水性ポリマーの球状塞栓物質であるSAP-MicroSphere(50-100μm)にエピルビシン溶解造影剤を吸着してDEBを作製し、リピオドールTACEと同様の方法で、血管造影上腫瘍濃染が消失するまで栄養動脈に注入した。再燃時には不応と判断されるまで繰り返しDEB-TACEを行った。

 対象59例の背景は、年齢70 歳、Child-PughスコアはA/B/Cがそれぞれ27例/29例/3例で、背景肝はHBVが8例、HCVが48例。AFP中央値は283ng/mL、PIVKA-II中央値は198 AU/Lだった。病期はI/II/III/IVa/IVbがぞれぞれ0/8例/47例/4例/0、脈幹浸潤陽性は55例。腫瘍の最大径は中央値4.8cm(2-10cm)で、腫瘍数では、10個以上の多発症例が42%を占めた(1個/2-5個/6-10個/10個以上がそれぞれ4例/9例/11例/25例)。全体として比較的肝予備能が不良で、進行した症例が多かった。リピオドールTACEの前治療歴は平均5.1回(2-13回)だった。

 DEM-TACEの治療回数は平均2.2回(1-4)、エピルビシン使用量は平均18mg/回と少量であった。多発症例が多いため塞栓範囲は全肝塞栓59%と広い傾向であり(全肝/葉/区域がそれぞれ35例/20例/4例)、肝外側副路からの治療も20例(33.9%)で施行された。

 奏効率は、初回DEB-TACEから3カ月時点で55.9%(CR/PR/SD/PDがそれぞれ3例/30例/10例/16例)、6カ月では39.0%(CR/PR/SD/PDがそれぞれ1例/22例/10例/26例)だった。観察期間中央値は21カ月(7-42カ月)で、治療成功期間中央値は6.5カ月(1-29カ月)、全生存期間中央値は24カ月 (4-36カ月)、1、2、3年生存率はそれぞれ78.5%、46.9%、30.1%と、いずれも良好な結果が得られた。観察期間内のDEB-TACE中止は46例で、中止した理由の内訳は、肝内病変の増悪(42例)、肝外病変の増悪(2例)、患者の意向(2例)だった。

 治療に関連した死亡、肝不全、胆管炎、胆嚢炎といった重篤な合併症は1例も認めなかった。またその他のグレード3/4の重篤な有害事象としては、白血球減少1例(1.7%)、血小板減少5例(8.5%)、AST上昇6例(10.2%)、ALT上昇2例(3.4%)が認められたが、従来のリピオドールTACEの報告に比し少なかった。また塞栓後症候群についてはいずれもグレード1/2と軽微な症状であり、その頻度も腹痛9例(15.3%)、嘔吐4例(6.8%)、発熱16例(27.1%)とリピオドールTACEに比し少ない傾向だった。

 この結果から、関氏は、「塞栓物質をDEBに変更することで、前治療のリピオドールTACEと同じ抗癌剤のエピルビシンを使用しつつも、さらに治療効果が得られる可能性と、TACE全体の継続期間延長および生存への寄与が示唆された」と結論した。また、この効果は、球状塞栓物質本来の高い塞栓強度と、DEBの持つドラッグデリバリーシステムとしての機能が反映された可能性があると推測した。

 血管塞栓用ビーズは、2009年に厚生労働省の「第10回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」で、日本国内への早期導入が推奨される医療機器の1つとして挙げられている。今年、国内製造販売承認申請がなされており、「近く承認されれば、国内いずれの施設でもDEB-TACEの治療が可能になる」と関氏は期待を語った。