大腸癌肝転移例において、化学療法後に末梢血循環大腸癌細胞CTC)が陰性化しなければ、化学療法の効果が得られず、予後不良である可能性が示された。化学療法前のCTCが40個/7.5mL以上であれば化学療法後に陰性化する可能性が低いという。10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会で、東京慈恵会医科大学附属柏病院外科の河原秀次郎氏が発表した。

 切除不能再発大腸癌、主に大腸癌肝転移例に対する治療として、化学療法による延命、化学療法後病巣の切除(conversiontherapy)、ベストサポーティブケアなどの選択肢があるが、効果が得られた症例と得られなかった症例を経験し、患者ごとにどの治療法が最適なのか事前に判断するのは難しい。

 そこで河原氏らは、CTCにより大腸癌肝転移巣に対する治療法の選択が可能がどうか検討した。

 対象は、2010年1月から2011年12月までに、同院で原発巣を切除したK-RAS野生型の切除不能再発大腸癌患者14人。化学療法のレジメンは、SOX療法(TS-1+オキサリプラチン)+パニツムマブを4サイクル(3カ月)行った。21日を1サイクルとし、1日目にパニツムマブ6mg/kgとオキサリプラチン130mg/m2を投与した。TS-1は80-120mg/日を2日目から15日目まで投与し、その後6日間休薬した。CTC値、CEA値は化学療法前後で測定した。CTCはCell Search Systemを用いて検討しており、細胞表面の接着分子(EpCAM)に対する抗体反応で分離し、細胞質内のサイトケラチンの有無で鑑別した。白血球との鑑別は細胞表面のCD45で行った。

 14例のうち、SOX療法がファーストライン治療だったのが9例、サードライン治療だったのは5例で、奏効率は50%、化学療法後に転移巣切除できたのは2例だった。 

 患者背景は、男性割合が86%、年齢は65.8歳、転移臓器として肝転移があったものが7例(50%)、肝転移と肺転移があったものが6例(43%)、その他臓器にも転移があったのが1例(7%)だった。血清CEA値が正常値の10倍(50ng/mL)以上だった患者は86%、CTC(7.5mLあたりの個数)が検出された患者は64%を占めた。なお、河原氏は、肝転移など転移巣があってもCTCが陰性だった患者が36%いたことは注目されると指摘した。

 化学療法後にCTCが検出されなかった患者(以下、CTC陰性例)は10人、CTCが検出された患者(以下、CTC陽性例)は4人だった。CTC陰性例はCTC陽性例に比べて化学療法前の血清CEA値は低値で、CTC陰性例は化学療法後に血清CEA値は低下していたが、CTC陽性例は化学療法後に血清CEA値は上昇していた。化学療法開始6カ月後にCTC陰性例では全例生存していたが、CTC陽性例では4例中1例しか生存していなかった。

 化学療法前後のCTC値の変化を見ると、化学療法後にCTC陰性となった患者は全例生存しているのに対し、CTC値が増加、もしくは低下したが陰性化しなかったCTC陽性例は予後不良で、全例が治療後6-8カ月以内に死亡した。

 次に、CTC値とCEA値との関係をみたところ、相関関係が認められ(相関係数=0.993)、血清CEA値が50ng/mLでCTCは0個/7.5mLだった。

 化学療法後にCTC陰性例となった患者のCTC値は、全例で40個/7.5mL以下だった。そこでCTCが40〜50個/7.5mLに相当する術前CEA値を求めた結果、150〜200ng/mLに相当していた。術前の血清CEA値が200ng/mL以上では化学療法後の予後は不良であると考えられた。

 これらの結果から河原氏は、「化学療法前後にCTC値を測定することで、肝転移巣への治療法が選別できる可能性が示唆された。化学療法の効果を十分得るには化学療法後にCTCが陰性になることが重要で、それを可能とするレジメンを見いだすことが重要だ」と語った。

 また、CTC測定について河原氏は、「測定には外注だとおよそ8万円ほどかかり、現時点ではどの施設でも測定できるマーカーではない。CTC値とCEA値の間に相関関係が見られたことから、CTC値が測定できない施設ではCEA値の測定が有用な治療指標となるだろう」と補足した。