前立腺全摘除術における神経血管束(NVB)の処理の客観的評価から、NVB温存に関し、ロボット支援前立腺全摘除術(RALP)施行例では意図した手技が施行されていたが、開腹による恥骨後式前立腺全摘除術(RRP)施行例では比較的高率に十分な温存がなされておらず、特に前立腺底部でその傾向が認められることが示された。10月25日から27日まで横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で、神戸大学大学院腎泌尿器科学分野の三宅秀明氏が発表した。

 前立腺全摘除術におけるNVBの処理は、温存と合併切除のどちらを選択するとしても、術後の機能温存および癌制御に直接影響を及ぼす重要な手技である。しかし、NVBの処理が意図した通りに施行できているか否かを的確に評価する非侵襲的な方法は確立されていない。

 そのため三宅氏らは、術前後のMRIと摘除標本の免疫染色を併用することにより、術式別にこの手技の結果を評価し、術者の意図通りに行われているかを検証した。

 対象は、限局性前立腺癌患者で、同科において、術前補助療法を施行せずに、RRPを施行した45人とRALPを施行した53人。

 術前後に3 tesla MRIを撮影し、拡散テンソル画像によるfiber tracking法でNVBを描出し、その変化を定量的に評価した。また摘除標本を用いて、前立腺左右の部位別(尖部、中央部、底部)の計6カ所に、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)抗体による免疫染色を施行し、その結果を定量的に評価した。

 三宅氏らはNVBの処理について、生検で癌を検出した側は原則として合併切除を行っているが、患者の希望、性機能、臨床病期などから総合的に判断し、症例毎に柔軟に対応している。RRPを施行した45人では、69のNVBに合併切除、21のNBVに温存を意図した手技が選択された。RALPを施行した53人では、58のNVBに合併切除、48のNBVに温存を意図した手技が選択された。

 NBV合併切除については、RRPとRALPともに、意図した手技でNVBが処理されていることが示された。術前と比べて術後に描出されるNVBは減少する傾向が顕著で、摘除標本でも免疫染色により同定される豊富な神経束の存在が確認された。

 一方、NBV温存については、術式により差がみられた。RRPによるNVB温存例では比較的高率に十分な温存がなされていないことが示され、特に底部でその傾向が顕著だった。RRP施行例の21の温存NVBにおいて、尖部、中央部、底部のfiber数の残存率はそれぞれ64.1%、69.7%、45.9%、nNOS陽性神経節数はそれぞれ22.6、19.2、37.4だった。

 これに対し、RALPによるNVB温存例では意図した手技が施行されていることが確認された。RALP施行例の48の温存NVBにおいて、尖部、中央部、底部のfiber数の残存率はそれぞれ87.1%、92.7%、85.3%、nNOS陽性神経節数はそれぞれ9.6、5.2、10.4だった。

 三宅氏は「確実なNVB温存にはRRPと比べてRALPが有用と考えられ、性機能温存を希望する症例には特にRALPの適応が推奨される。RRPでNVBの温存を意図する場合には、特に前立腺底部側でのNVB処理に注意を要する」と考察した。

 今後の課題として、三宅氏は「今回は予備的な結果であり、今回の形態学的検討結果が術後の機能的成績にも反映されているか、検証する必要がある」と述べた。