進行性腎細胞癌に対するスニチニブ投与は、高い臨床効果を有する一方で、有害事象により投与期間の短縮や減量、中止を余儀なくされるケースは少なくない。今回、秋田大学腎泌尿器科の土谷順彦氏は、スニチニブの薬物動態と治療効果、有害事象との相関を検討し、甲状腺機能低下症や疲労のグレードはスニチニブ血中トラフ値と相関する一方、投与初期の高い血中濃度のみでは長期的な有効性は得られないことを報告した。10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会で発表した。

 分子標的薬の投与の際、投与量設定において体重や体表面積などを考慮せず、薬物治療モニタリング(TDM)が行われていない事も多い。

 そこで、スニチニブ投与を受けた進行性腎細胞癌患者20例(年齢の中央値は67歳、男性が17例、50mg/日、37.5mg/日、25mg/日のいずれかを投与)について、スニチニブ(SU)と、その代謝物でSUと同程度の薬効を有するといわれているN-デスエチルスニチニブ (DES)の血中濃度を、液体クロマトグラフと質量分析を組み合わせたLC-MS/MSを用いて測定した。

 これまでの検討から、1サイクル目の7日目のSUおよびDESのトラフ値はAUCと強く相関することが示されている。従って、トラフ値を測定すればAUCは予想できると判断した。

 まず血中濃度の推移を評価した結果、血中濃度が定常状態に達するまで、10-14日を要することが示された。

 SU、DESともに7日目のトラフ値は用量依存的に上昇していた。スニチニブとDESの比はおおよそ4:1だった。7日目における血中濃度の日内変動を調べたところ、スニチニブ、DESのいずれについても個人差は大きかった。

 SU+DESのトラフ値と体格の関係を調べたところ、体重(R=0.516)、体表面積(R=0.451)と一定の負の相関を示したが、年齢、性別との間には明確な関係は見られなかった。

 スニチニブの薬物代謝との関連が報告されている薬剤代謝遺伝子多型とSU+DESのトラフ値との相関を調べたが、有意な関係は見られなかった。

 1サイクル目に見られた有害事象のなかで、7日目のSU+DESのトラフ値と有意な相関が見られたのは、甲状腺機能低下症(p=0.044)、疲労(p=0.032)の2つ。グレード2以上の甲状腺機能低下症、または疲労が発生した症例のトラフ値はグレード0、1のグループと比較して有意に高かった。それ以外の有害事象との関連は有意にならなかった。

 7日目のSU+DESのトラフ値の中央値(98ng/mL)を閾値として2グループに分け、無増悪生存期間、全生存期間を比較検討したが、中央値以上グループと中央値以下のグループの間で差はなく、治療初期の高い血中濃度のみでは長期効果は得られないとした。

 また、1サイクル目の服薬期間について、3週間未満と3週間以上のグループに分けてトラフ値を検討した結果、3週間未満グループの方がトラフ値が高く、臨床効果を得るには血中濃度だけでなく、高い用量強度が必要と推測された。

 これらの結果から土谷氏は、スニチニブ投与の有効性を得るには、TDMを用いた適正な血中濃度の維持による有害事象の管理と用量強度の維持が重要であるとした。今後、至適血中濃度の設定、個々の患者における至適投薬期間と休薬期間の設定といった課題を克服することで、患者ごとの投与量や投与期間の最適化にTDMが役立つ可能性があるとした。今年になり、血中濃度を測定し、投与量を管理する場合に算定できる特定薬剤治療管理料に該当する項目としてイマチニブが追加されており、今後、分子標的薬の血中濃度測定が注目されるだろうと語った。